作家・早乙女勝元氏が死去 90歳、老衰 東京大空襲・戦災資料センター名誉館長
12歳で経験した東京大空襲の被害をまとめ、多くの著書を発表した東京大空襲・戦災資料センター名誉館長で作家の早乙女勝元(さおとめ・かつもと)氏が10日午後1時6分、老衰のため埼玉県内の病院で死去した。90歳。東京都出身。
約10万人が亡くなったとされる1945年3月10日の東京大空襲を経験。「東京空襲を記録する会」の中心として、被害の記録や記憶を後世に残そうと、人々の体験談や公の被害記録などを「東京大空襲・戦災誌」5巻にまとめた。
著書は「東京大空襲-昭和20年3月10日の記録」や「わが街角」など200冊以上。小説やノンフィクション、絵本や紙芝居などで戦争体験を伝え続け、「声を上げ続けなければ、戦争は『なかったこと』にされかねない」「二度と『戦前』『戦中』という状況を招いてはなりません」と反戦、平和を訴え続けた生涯だった。
親交の深い映画監督の山田洋次氏は「1931年、彼は東京の下町に産まれて、かの下町大空襲の中を必死に生きのびた。戦後の日本について、平和と戦争について語り合えるかけがえのない友人を失ったことを、心から淋しく思います」と悼んだ。山田氏の映画「男はつらいよ」の舞台が東京・柴又となったのは、早乙女さんが山田監督に案内したことがきっかけとされる。