映画「愚か者のブルース」監督のRCC横山雄二アナ 「唯一無二の局アナでいたい」多方面で異才発揮

 広島・中国放送(RCC)の横山雄二アナウンサー(55)が脚本、監督を務めた映画「愚か者のブルース」が7月29日から広島で先行公開され、11月18日からは全国で順次公開される。

 主演は加藤雅也で、30年前に伝説の映画を撮影したが、今は落ちぶれ、ヒモのような生活を送っている映画監督を演じる。加藤を支えるピンサロ嬢には熊切あさ美。仁科貴、筒井真理子らに加え、39年ぶりの映画出演となるピンク・レディーの未唯mieが熱演。横山アナと交流の深い爆笑問題の太田光も友情出演し、作品に彩りを添える。横山アナ自身も加藤と熊切が逃げ込むストリップ劇場の館長として出演している。

 地方局のアナウンサーでありながら、映画監督のみならず、作家や作曲、歌手などマルチな活動を続ける横山アナに、今回の作品の見どころや、テレビ局に籍を置きながら多方面にチャレンジを続ける理由を聞いた。

  ◇  ◇

 -横山アナにとっては劇場公開映画としては2本目の監督作品ととなります。

 「撮影が終わったのは2020年2月。ちょうどコロナが始まった頃でした。その後、コロナが本格化して、密になったり、県またぎをしてはいけないなど制約が多くなり、編集作業がまったく進まなくなりました。正直、このままお蔵入りしてしまうのではと思ったこともあったので、撮影終了から2年半かかりましたが、ようやく劇場公開を迎え、『やっと皆さんに見てもらえる』というほっとした思いと、映画を作って世に送り出すことがこんなに大変なことだったのかということを改めて感じています」

 -今回の作品は、横山アナが監督を務めた「浮気なストリッパー」(15年公開)、プロデューサーとして携わった「彼女は夢で踊る」(19年公開)に続くストリップ劇場3部作の最終章です。今回も昭和の香りが漂う、それでいて涙を誘う大人の物語だと早くも評判になっています。

 「映画の完成前に(親交の深い)角川春樹さんに見ていただいたんですが、『こりゃ傑作だな』とすごく褒めていただきました。撮影に当たってアドバイスをいただいた村西とおる監督からもお褒めの言葉をもらいました。村西監督には『ベッドシーンでは絶対に女は目を開けなきゃいけない』とか『指先を殺しちゃダメ』など、大人の世界の作品を作る上で貴重なアドバイスをいただきました」

 -ピンクレディーの未唯mieさんも出演されていますね。

 「小学生の時に学校の教壇でUFOを歌って踊っていた自分がまさか未唯さんに『ヨーイ、スタート!』と声をかけるとは思ってもみなかったです。『ピンク・レディーの未唯を演出しているんだ』という変な興奮みたいなのがありました(笑)。役どころは壮絶な過去を背負ったピンサロ嬢の母親役で、生活感があってはいけないということで、いろいろ考えた結果、未唯さんにオファーを出しました。正直(出演は)難しいかなと思っていたんですが、『出ます』と言っていただいて。撮影の時はスタッフもみんな『ピンク・レディーが来た』って盛り上がってました(笑)」

 -横山アナのこだわりが詰まった作品。

 「イメージは僕が高校生、大学生だった頃の日本映画です。べたつきというか、湿り気があるような映画です。最近の映画はきれいな、さらっとした感じが多いので、中高年世代の人が見て『懐かしいね、この雰囲気』と郷愁、哀愁を感じてもらえるような作品を目指しました。プロデューサーもしていただいた主演の加藤さんとも『子供の頃見ていた映画を作りたいね』という話をしていましたし、カメラマンとも『古くさい昔の映画を撮ろう』と撮影の仕方にもこだわりました。ストーリーも昭和の劇画調というか、昔の東映映画のように人間関係を中心に進んでいきます。若い人が見たら逆に新鮮に感じてもらえる作品だと思います。撮影は(歓楽街の)流川や薬研堀を中心にオール広島ロケです」

 -横山アナといえば広島の中国放送(RCC)の現役アナウンサーでありながら、アナウンサーの枠を越えて他方面で活動しています。独立ということを考えたことはなかったのですか。

 「僕がまだ何者でもなかった時に、この世界への切符をくれたのがRCCで、ここでテレビやラジオを何千本と作らせてもらったことが現在の礎になっています。なので、今も自分がRCCにいることが自然なような気がしています。勤務先というよりも所属事務所という感じですね。確かに辞める機会は何度もあったんですけど、局アナをしながらも、映画の監督や本を出したり、CDを出したり、しかも片手間ではなくプロと同じレベルでやらせてもらえる環境だったので、あえて辞める必要はないのかなと。日々のレギュラー番組を担当しながら、その空いた時間は、僕がやりたいことを、決して応援はしてくれないけど、ほったらかしにしてくれているというか公認してくれているというか」

 (続けて)

 「僕がやりたいことは、映画も小説もあるんですけど、やっぱりラジオの生放送が一番の柱なんです。これをやらせてもらっている間はRCCにいてもいいかなというか、いさせてもらおうかなという感じです」

 -局アナをしながら何足もわらじを履くのは大変でしょう。

 「僕は中学、高校と勉強せずに遊んでばかりいました(笑)。受験勉強も特にしていません。でも、今は仕事を終えて家に帰ると、だいたい2、3時間は机の前に座って映画の脚本を書いたり、小説書いたり、音楽の詩を書いたりしています。大人になって受験勉強の順番が回ってきた感じですね。自分でも『毎晩、何やってるんだろう』って思うことも確かにあります。でも、たとえば映画1本を作るにしてもお金がすごくかかることなんですが、僕の才能を信じて、そこに出資してくださる方がいたり、俳優陣や演出チームも僕についてきてくれています。こういうことって本当に貴重だと思うんです。自分の中ではものすごく無理しながらやっているのは間違いないんですが、せっかくこういうチャンスをもらっているのだから、やらない選択肢はないですね」

 -他局でアナウンサーをしながら、これだけいろんなことをやっている人は?

 「たぶん一人もいないです。本を一冊出したり、CDを一曲出した人はいっぱいいると思いますけど、僕はCDを10数枚、本も10冊以上出してますし、映画やドラマの監督をしたり、プロデュースしたり、出演したのも30本以上。こういう人間は放送の歴史上もいないでしょう。自分の中では、これからも“唯一無二の局アナでいてやる!”みたいな気概があります(笑)」

 -これからもスタンスは変わらない?

 「そうですね。来年夏にまた新しい映画を撮ることを依頼されたので、いま撮影に向けて脚本を書き始めたところです。今回の『愚か者のブルース』をヒットさせて、いい流れをつくっていきたいと思っています。とてもいい作品になったので多くの人に見ていただきたいですね」

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