仲代達矢、89歳「私は『絶対戦争反対です』と言いながら、死んでいきます」
俳優の仲代達矢(89)が12日、東京・日本記者クラブ主催で行われた、主演舞台「いのちぼうにふろう物語」(9月4日~10月10日、石川・能登演劇堂)会見に登壇した。
役者デビュー70周年を記念した、主宰する若手俳優塾「無名塾」の舞台公演。同塾は1996年に亡くなった妻で女優の宮崎恭子さん(演出家名義・隆巴)とともに、75年に立ち上げた。恭子さんが劇作を担当した本作は今回が再々演。仲代は「彼女との共同作業との気持ちで稽古に取り組んでいます。(12月には)90歳になりますので、一つの節目として」と本公演にかける思いを語った。
70年の俳優人生を振り返って「よく戦った人生。生きる知恵のない私が19歳で俳優座の門をたたき、今までよく生きてたなと奇跡に感謝しています」とつむいだ。指導する若い役者たちとステージに立つと、老いも実感するようで、「私は若者の10倍は努力しないと現役でやっていけない。それが一つ生きる目的。人間は生まれて離れていくもの。そろそろだとは思っておりますが、生きてるうちは頑張りたい」と力強く話した。
一方で、「90歳を過ぎて現役を続けるには、どうしたらいいのか悩んでいるところ」と複雑な表情。「冬眠の時代に入ろうかな…戦う余生じゃなくて安らかな余生に。もしかしたらこれが引退公演になるかもしれませんし、もう一本やるかもしれません」と葛藤も明かした。
9~13歳で太平洋戦争を経験した。東京大空襲を耐えた記憶を語り、「戦争中の体験が(俳優生活に)大きく影響していると今は思っています。黒沢明先生の『人間に欲望がある限り、戦争は終わらない』という言葉が今だに心に残っています。私は『絶対戦争反対です』と言いながら、死んでいきます」と反戦を訴えた。