松本幸四郎「存在の大きさを感じる日々」 昨年11月に死去した中村吉右衛門さんへ思い
歌舞伎俳優の松本幸四郎(49)が、東京・歌舞伎座の「秀山祭九月大歌舞伎 二世中村吉右衛門一周忌追善」(27日まで)の第一部「菅原伝授手習鑑 寺子屋」、第二部「揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)」で主演を務めている。昨年11月に77歳で死去した叔父の中村吉右衛門さんへの思いや、大ブレーク中の長男・市川染五郎(17)への期待を、デイリースポーツに語った。
幸四郎は熟慮し、吉右衛門さんへの思いを「情熱芸を永遠に」と色紙にしたためた。同じ舞台に立つ度に、歌舞伎への情熱を肌で感じたという。
「歌舞伎が今の皆さまに受け入れていただき、感動していただく力を持っているんだということを100パーセント信じていた人。本当に歌舞伎に全てをかけた人だった」と述懐。9月は「叔父の存在の大きさを日に日に感じる日々になるんじゃないかな」と、しみじみと語った。
「継承」を使わなかった理由を「自分が何か名乗りを上げてという感じになるのは少し違う」と説明。「叔父が目指していた芸をお見せするには習った人間、一緒の舞台に立った人間が体現することが今できる唯一の方法」と決意を口にした。
印象深い思い出は2014年の「勧進帳」。幸四郎(当時染五郎)が弁慶を初めて演じ、吉右衛門さんが源義経役で支えた。義経役のため、吉右衛門さんがジムでトレーニングを始めたと聞き「『何としても、自分もちゃんと出る体にするんだ』と準備をされていて、ありがたいと思っていました」と感謝した。
24年には主演映画「鬼平犯科帳」が公開予定。吉右衛門さんから五代目となる鬼平役を引き継ぎ「叔父がやられていたことに鬼平の魅力を感じていた人間。尊敬と感謝を胸に新たな鬼平を作りたい」と意気込んでいる。
また、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で大反響を呼んだ染五郎について聞くと「面白かった。三谷(幸喜)さんの映像作品に出られたのは本当に幸せ」と父の顔に。6月に歌舞伎座初主演を果たし、役者としてまい進する息子に「もっともっと大きな大きな戦力に1日でも早くなってほしい。自分の限界を常に先に持っていく。自信はないだろうけど、ぜひ飛び込んでほしい」と、さらなる成長を願った。
◆松本幸四郎(まつもと・こうしろう)1973年1月8日生まれ、東京都出身。二代目松本白鸚の長男。姉は女優の松本紀保、妹は松たか子。屋号は高麗屋。79年、歌舞伎座「侠客春雨傘」で三代目松本金太郎として初舞台。81年、「忠臣蔵」で七代目市川染五郎を襲名。94年名題昇進。2018年、「勧進帳」他で親子三代同時襲名、幸四郎に。今年はドラマ「マイファミリー」の怪演で視聴者を翻弄(ほんろう)。身長176センチ。