山本千尋 魅せるクールビューティー 流麗アクション支える中国武術・元世界王者の実績
女優の山本千尋(26)が、得意のアクションを生かして話題作を飛び回っている。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(総合、日曜、後8・00)では最凶アサシン・善児に育てられた“二代目”のトウとして衝撃的な殺害シーンを演じ、視聴者に衝撃を与えたばかり。俊敏な動きで魅せるクールビューティーは、それもそのはず中国武術の世界王者となった実績を持つ。素顔に迫ると、大河の脚本家・三谷幸喜氏との不思議な縁も見えてきた。
見せ場となったのは、大河ドラマの第33回「修善寺」。合議制で運営される鎌倉幕府の権力争いが激化する中、二代目の殺し屋として、源頼朝の息子・頼家と育ての親の善児にとどめを刺し、視聴者の度肝を抜いた。
主人公・義時ら北条家を支えるオリジナルキャラクターで、初登場から流麗な剣舞を披露。「三谷さんの愛でこれでもかってアクションがあります」と笑顔を見せる山本を下支えしているのが、世界王者となった経験を持つ中国武術だ。
地元・神戸のテレビ局がのちの恩師を特集しており、ジャッキー・チェン好きだった母親が当時3歳の山本を道場へと連れて行った。小学校に入って最初に出場した大会は最下位。トイレに引きこもって悲嘆に暮れていると、母親に「練習もしていないのになんでそんな悔しいの?」と言われ、火がついた。
「お小遣いを握りしめて、スポーツショップに5キロのダンベルを買いに行ったのを覚えてます。小学2年生からスクワット、腹筋、背筋をして、走りに行く生活をしていました」と本格的なアスリート生活に突入。中学、高校と競技を続け、世界ジュニア 武術選手権大会では08年と12年に世界一に輝いた。
競技は、フィギュアスケートにも似た表現の世界。高校1年次の大会で引退し、女優への道を歩み出した。
実は三谷氏と不思議な縁で結ばれている。18歳で上京してすぐ、地下鉄で遭遇した。「向こうがこっちを知っているわけもないですし、声をかけずに終わったんですけど、月日が経ち23歳のとき、三谷さんから面談をしたいと話がきて、会いに行くと、第一声が『僕、電車で会ったんですけど、覚えてますか?』だったんです」。山本の存在や経歴を知り、注目してくれていたのだという。
大河で演じるトウも、三谷氏からは「千尋さんが受けなかったら役自体をなくそうと思っていた」とまで伝えられた。最大限のエールに山本は「役は三谷さんからのラブレター。今回も三谷さんの思いがつまったト書きやアクションを入れてもらっているので、喜んでもらえるように自分の質を上げつつ、役として色をつけられたらいいなと思います」と燃えている。
◆山本千尋 (やまもと・ちひろ)1996年8月29日生まれ。兵庫県神戸市出身。14年の映画「太秦ライムライト」でヒロイン役を演じ、注目を集める。17年のドラマ「ウルトラマンジード」では戦うヒロイン・鳥羽ライハ役。20年には三谷氏が脚本・演出したアマゾンプライムのドラマ「誰かが、見ている」に出演。今年はドラマ「未来への10カウント」「テッパチ!」、映画「キングダム2 遥かなる大地へ」と出演が続いている。