ゴダール監督死去 ヌーベルバーグで映画を刷新 「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」など
映画の刷新運動「ヌーベルバーグ」の中心的存在で、「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」などの作品で知られる仏映画監督のジャン=リュック・ゴダールさんが13日、死去したと同日、仏メディアが報じた。91歳。パリ出身。革命的な手法で国内外に多大な影響を及ぼし、80代になっても新境地に挑み続けた巨人だった。
革命児は自裁で、人生に幕を引いた。
初の長編劇映画「勝手にしやがれ」(60年公開)から始まるゴダールさんの軌跡は、映画史を永遠に変えた。無軌道な青年(ジャン=ポール・ベルモンド)の生と死を、路上でのゲリラ撮影や即興演出、唐突なショットのつなぎなど、従来の映画文法を踏まえた上で刷新するやり方で描き、世界的な反響を呼ぶ。
ヌーベルバーグ(新しい波)の旗手としてフランソワ・トリュフォー監督らと共に新時代をもたらした。北野武監督、クエンティン・タランティーノ監督ら影響を受けた映画作家は数知れない。
1930年生まれ。ソルボンヌ大在学中にトリュフォーらと出会い、映画批評を始める。「女と男のいる舗道」「はなればなれに」で青春を鮮烈に描き、後者ではルーブル美術館で伝説的なゲリラ撮影を行った。「女は女である」「気狂いピエロ」などでは、カラフルでオシャレなスタイルとあふれる引用で魅了した。
60年代後半には「ウイークエンド」や「中国女」など左翼的な傾向が顕著となり、商業映画を離れてジガ・ヴェルトフ集団を結成。「東風」などの難解な映画を制作した。
79年の「勝手に逃げろ/人生」で商業映画に復帰後も、現代の処女懐胎を描いた「ゴダールのマリア」で教会から上映禁止運動を起こされたり、「ヌーヴェルヴァーグ」で縁遠かったアラン・ドロンを起用したり、「さらば、愛の言葉よ」で80代にして3D映画に取り組んだりと、年齢を重ねても戦闘的な映画作りを続けた。
私生活では60年代の代表作の大半でヒロインを演じたアンナ・カリーナと61~64年に、「中国女」などに出演したアンヌ・ヴィアゼムスキーと67~70年に結婚。その後アンヌ=マリー・ミエヴィル監督と公私共にパートナー関係を築いた。なぜか、いずれも同じ名を持つ女性たちだった。