菅氏弔辞に昭恵さん涙 友人代表で焼き鳥店秘話 岸田首相は「いつまでも思い出す」
弔旗を付けた霊柩車は27日午後1時前、東京・富ケ谷の自宅を出発した。着物の喪服姿の妻昭恵さんは遺骨を抱いて後部座席に座った。自衛隊の儀仗隊は白い制服に喪章付きの銃剣。号令が響くと、車中の昭恵さんは隊員に頭を下げた。
国葬会場の日本武道館前に遺骨が到着すると、陸上自衛隊による弔砲19発が響き渡った。富士山が好きだった安倍氏のために日本の山々などが白や黄色の花で描かれた式壇が設けられ、柔らかな笑みをたたえる遺影が正面に飾られた。
午後2時過ぎ、喪服や黒いスーツの参列者でほとんどの座席が埋め尽くされ、静まりかえる会場に、昭恵さんが遺骨を抱いて入場。国歌演奏、1分間の黙とうの後、場内の大型スクリーンで東日本大震災の復興対応や国会での演説などをまとめた約8分間のVTRが流れると、会場から拍手が起こった。
葬儀委員長の岸田文雄首相は弔辞で、安倍氏の功績を説明した上で「友人をこよなく大切にし、昭恵夫人を深く愛した良き夫でもあったあなたのことを、いつまでも懐かしく思い出すだろう」と遺影に語りかけた。
官房長官として安倍氏を支えた菅義偉前首相は友人代表として弔辞を読み、苦楽を共にしたという7年8カ月を振り返った。首相を一度退陣した負い目から、12年の総裁選出馬をためらう安倍氏を銀座の焼き鳥店でくどき「3時間後にはようやく首を縦に振ってくれた」と秘話を披露。昭恵さんは涙を流し、白いハンカチで何度も目元を押さえた。
天皇陛下の勅使、皇后宮使らの拝礼後、出席した皇族に続き、喪主の昭恵さんはじめ、参列者が献花した。
国葬には、秋篠宮ご夫妻ら皇族7人のほか、三権の長と国会議員、都道府県知事ら計3600人程度が参列し、国外関係ではハリス米副大統領やインドのモディ首相ら首脳級50人と合わせて計約700人が出席。立憲民主党は執行役員が欠席し、共産党などは参列を見送った。