「ゴルゴ１３」「無用ノ介」「鬼平犯科帳」などで知られ、昨年９月に８４歳ですい臓がんのため、死去した劇画家のさいとう・たかをさん（本名・齊藤隆夫＝さいとう・たかお）のお別れの会が２９日、都内のホテルで行われ、約５００人が参列した。親交のあったちばてつや氏（８３）、里中満智子氏（７４）、秋本治氏（６９）ら漫画家仲間や、政治家の麻生太郎氏（８２）、東京都の小池百合子知事（７０）、俳優の舘ひろし（７２）、安治川親方（４３＝元関脇安美錦）ら著名人も、ギネス世界記録にも認定されたレジェンドとの別れを惜しんだ。

　「用件を聞こうか」－。受付でデューク東郷のパネルが参列者を待ち受けた。悲しみから１年、「ゴルゴ１３」を生み出した劇画界の巨星とのお別れの場は、５０年以上連載を続けた“さいとうワールド”に包まれていた。

　祭壇には、生前に好きだった野の花をイメージした、白基調のカーネーション、スプレーマムなど５５００本と、５０冊のコミックが飾られた。遺影の両脇にはデューク東郷や鬼平などキャラクターたちの特大パネルが設置。会場の隣には展示ブースも併設され、デューク東郷の等身大フィギュアやコミック５５０冊、雑誌１５０冊などが置かれた。

　漫画家仲間や出版関係者だけでなく、「ゴルゴ１３」のファンである麻生氏やアニメでデューク東郷の声優を担当した舘など、各界からの約３３０人はじめ、約５００人が参列。劇中で何度も火を噴いたライフル「Ｍ－１６」のモデル銃などに見入った。

　「あしたのジョー」のちば氏が弔辞を読んだ。分業制の漫画制作や青年向け漫画の必要性を訴えた先見の明を評価。その上で「あなたは誰よりも周りを思いやる、とても優しくて思慮深いジェントルマン。仕事も遊びもすべてに大胆で繊細。ゴルゴ１３とたかをちゃん、今の私には２人がまるで一心同体、記憶の中ではしっかりと重なって見える」と遺影を見上げ、「たかをちゃん、わしもまもなくそっち行くで、待っとってね」と呼びかけた。

　昨年９月に２０２巻だった「ゴルゴ１３」はさいとう・プロダクションが遺志を継ぎ、連載を継続し、９月５日に２０６巻を発売したばかり。デューク東郷は、著者死してなお生き続けていく。