「ヒポクラテスたち」などの青春ものから「ゴジラＶＳビオランテ」などの大作まで幅広い作品を手掛けた映画監督の大森一樹（おおもり・かずき）さんが１２日午前１１時２８分、急性骨髄性白血病のため、兵庫県西宮市の病院で死去していたことが１５日、分かった。７０歳。大阪市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は妻聖子（せいこ）さん。後日、「お別れの会」を開く予定。

　７０年代末の日本映画界に新風を吹き込み、関西のオピニオンリーダーでもあった俊才が旅立った。

　大森さんは２０１５年公開の映画「ベトナムの風に吹かれて」を最後に、近年は表舞台での活動を控えていた。闘病生活を送っていたとみられるが、今月２０日には自身の特集が組まれている第２３回宝塚映画祭で舞台あいさつを行う予定で、同映画祭のツイッターによると、「１１月には退院する」と話していたという。

　京都府立医大在学中、自主制作映画「暗くなるまで待てない！」で注目を集め、１９７８年の「オレンジロード急行」で商業映画デビュー。医師免許を持っており、医学生たちの青春群像を描いた「ヒポクラテスたち」（８０年）や、芦屋市立精道中学の先輩・村上春樹氏（７３）のデビュー作を映画化した「風の歌を聴け」（８１年）などの青春映画で名を上げた。

　８９年の「ゴジラＶＳビオランテ」、９１年の「ゴジラＶＳキングギドラ」で新たなゴジラシリーズを方向付けるなど、特撮や恋愛、野球など題材は多岐に渡った。近年は後進育成にも取り組み、０５年からは大阪芸術大学芸術学部映像学科・同大学院で教授を務めた。

　１０歳から芦屋に住み続け、地元の兵庫県が舞台の映画も多数制作。９５年の阪神・淡路大震災では自宅で被災し「自分で何ができるかと考えた時に、やはり神戸を舞台の映画を」と、「走れ！イチロー」（０１年）などの作品で映画界から復興を盛り上げようとした。

　半世紀以上の阪神ファンでもあり、甲子園球場にも足を運んだ。０５年の日本シリーズ中にはデイリースポーツのインタビューを受け、ロッテ相手に連日の大敗も「最後に阪神が笑う。最後は日本一です」と、日本一を信じてやまなかった。

　◇大森一樹（おおもり・かずき）１９５２年３月３日生まれ、大阪市出身。自主制作映画で注目され、７７年、脚本「オレンジロード急行」で第３回城戸賞。７８年、同作でメジャー映画監督デビュー。８０年、京都府立医科大卒業。８３年、医師国家試験合格。８６年、「恋する女たち」で文化庁優秀映画賞。８８年、文部省芸術選奨新人賞。９５年、阪神・淡路大震災に被災。００年、大阪電気通信大教授。０５年、大阪芸大教授。０６年、兵庫国体式典総合プロデューサー。