ももクロ・夏菜子の再生物語 声優で高評価 高音への悩み乗り越え“研究者”の日々結実
ももいろクローバーZの百田夏菜子(28)が、マーベル映画の最新作「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」(公開中)の吹き替え版声優として評価を高めている。前作から声を演じている天才科学者シュリに焦点の当たる3時間弱の大作。個性的な声を持つからこそ悩み、葛藤した過去をバネに“声の研究者”として試行錯誤した日々が、複雑な感情表現へと結実した。壮大なサーガに身を投じるリーダーの心境を聞いた。
前作から4年。久々に再会したシュリは立ち位置を大きく変えていた。前作で主人公ブラックパンサー役を演じた米俳優チャドウィック・ボーズマンさんが20年に死去。物語は妹シュリら残された者たちの継承と前進の戦いへと移った。
喪失と再生がダイナミックなアクションとともに活写され、百田は「私の4年間では深みが足りないんじゃないかと焦るくらいシュリの雰囲気も変わっていて、だいぶ不安もありつつ、究極状態の悲しみ、怒り、悔しさ、葛藤…それを探して、近づけるのが大変でした」と吐露した。
オーディションで勝ち取った初の吹き替え版声優。空白の4年間も役とともに“生きて”きた。シュリ役の女優レティーシャ・ライト(28)の作品を追い、ネット記事を検索しては思いをはせた。洋画を見る時は吹き替えがどう表現しているか気になり、字幕と対比するようになった。
「あんなに字幕と吹き替えを行ったり来たりするようになったのはこの作品に出会ってから。前作に関わらせてもらって、もっと知りたい、知りたいと自分の中で変化がありました」と振り返る。
かつては自分の声が嫌いだった。人を振り向かせる魅力を持った声だが、高音で癖が強い。「一時期、本当に自分の声が好きじゃなくて、お母さんに『私はなんでこんな声なんだろう?』って言っちゃったことがあるんです。歌がものすごく下手なのは声のせいだと思っていて…」。
技術が上がるにつれて、声は武器になった。「ドラマや舞台、歌、ナレーション…声の作り方って全部違う。いろんな声の出し方があることを歌をきっかけに知ることができたので、一文字、一文字こだわって歌って、どうしたら届くんだろうってやっていることが、ジャンルは違うんですけど、つながっていたらうれしい」。絶望を乗り越えた先にあった光。作品にも通じる再生の物語が、吹き替えに魂を吹き込んだ。
◆百田夏菜子(ももた・かなこ)1994年7月12日生まれ、静岡県出身。2008年、ももいろクローバー結成。11年、ももいろクローバーZに改名。個人ではNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」、映画「すくってごらん」などに出演。18年、米映画「ブラックパンサー」で主人公の妹シュリ役の日本語吹き替え声優を務めた血液型AB。