【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】真打ち昇進30年“芸欲”旺盛!将来はタイで

 年が改まると真打ち昇進30年。記念の年を迎えるが、「この年齢まで落語家ができたことが、ただただありがたい」と、桂竹丸(65)は自然体を崩さない。

 落語芸術協会会長の春風亭昇太(63)と共に前座修業時代を過ごし、現在は同協会の理事、そして兄貴分として若手に頼られている。

 2020年、文化庁芸術祭大衆芸能部門で優秀賞を受賞した。歴史新作落語「明智光秀」等におけるスピード感がありつつも穏やかなしゃべりが客席に届くと高く評価されたが、竹丸の話芸の質を裏打ちしているのは、“ラジオパーソナリティー”としての経験値だ。

 「ニッポン放送の『ラジオビバリー昼ズ』に昇太と出ているときに、高田文夫先生にラジオの面白さを教わりました。北海道のSTVラジオでは、ラジオパーソナリティーの巨人・日高晤郎やあの松山千春にラジオの作り方を教わりましたね」

 現在は出身地の鹿児島MBCラジオでレギュラー番組「たけまる商店営業中!」(日曜日、前10・30~12・50)を持ち、「毎週土曜日に飛行機で帰郷し、生番組と収録番組をやって、日曜日に帰京する生活」を、前番組から数えると20数年は続けているという。

 「前座の頃から30数年、テレビやラジオのレギュラー番組が切れたことがないんですよ。地方が多いですけどね」という強運の持ち主だが、やはり土台は落語家としての立ち位置。

 「芸術祭で優秀賞が取れたという感動はあるんですけど、取ったために止まっちゃいけないと自分に言い聞かせています。慢心せずに、前よりもっと、もっとと考えないと」と“芸欲”をのぞかせる。

 文化庁の助成を受け、タイの大学で現地語による落語「動物園」を披露したことがあった。以来タイ贔屓で、長期休みが取れると現地へ。

「いずれタイで、黒門付き姿でテレビのオーディションを受けて、小噺でウケてみたいですね。歴史新作落語では、信長と秀吉と光秀と家康があの世で会って罵り合う物語を今、こしらえています」と、ベテランとして収まる気配はゼロだ。

 年明けの初席では、東京・新宿末広亭の三部でトリを務める(一部は昇太、二部は神田松鯉)。「落語の後、若手と一緒に大喜利をやって、寄席をにぎやかにしたいですね」(演芸評論家)

 ◆渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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