高橋幸宏さん 10代から貫く自身の美学 世界にテクノブーム巻き起こす

 イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)やサディスティック・ミカ・バンドのメンバーとして世界的な名声を集めたドラマーでシンガー・ソングライターの高橋幸宏(たかはし・ゆきひろ)さんが11日午前5時59分、脳腫瘍により併発した誤嚥性肺炎により死去したことが15日、分かった。70歳。東京都出身。葬儀は家族葬として行われた。

  ◇  ◇

 高橋さんは細身から生み出す正確無比で繊細なビートと卓越したファッション感覚で、ドラマー像、ロックミュージシャン像を革新した。75年、ミカバンドの英国公演ではイブ・サンローランの靴を履いて演奏。「客席から見えるはずはないんだけど、それでいい」と美学を貫いた。

 小5でドラムをたたき始め、中学時代に早くも兄・信之のバンド「ザ・フィンガーズ」で代演を務める早熟ぶり。音楽仲間には細野晴臣、小原礼、松任谷由実らがおり、高校時代には東郷昌和(後にBUZZ)らとバンド「ブッダズ・ナルシーシー」を組んだ。

 ガロやブレッド&バターのバックで頭角を現し72年、ミカバンドに加入。加藤和彦さんからは「筋肉隆々としている必要なんてない」と言われたという。

 78年には細野、坂本龍一とYMOを結成。アルバムが全米発売され、ワールドツアーも行うなど世界的な人気を集め、テクノブームを巻き起こした。赤い人民服などのビジュアルは若年層に大きな影響を与え、ヒット曲「君に、胸キュン。」などで聴かせる甘く切ない歌声や、代表曲「ライディーン」の作曲など、細野と坂本の強烈な個性に挟まれながらも歌手、作曲家の才能を開花させた。

 自著で理想の音楽家像について「目立たない主役」「目立つ脇役」としてビートルズのジョージ・ハリスンを挙げていたが、そのような存在に成長した。

 ソロでは男の弱さ、傷つきやすさを表現する歌詞と美しいメロディーを併せもつ作品を発表した。同世代の鈴木慶一とのユニット「ザ・ビートニクス」、年少の原田知世らとのバンド「pupa」、同じく小山田圭吾らとのバンド「METAFIVE」などの形態でも活動し、新たな音楽表現を追求。プロデューサーとしても安田成美、竹中直人らを手がけ、08年からはフェス「ワールドハピネス」を主催した。

 闘病中も21年には大貫妙子の新曲にドラムで参加し、昨年発売の原田知世のアルバムにはビートニクスで曲を提供。最後まで音楽家人生を貫いた。

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