藤井聡太王将 防衛 羽生善治九段を撃破 初の番勝負“世紀の一戦”4勝2敗で制す
将棋の第72期王将戦七番勝負第6局2日目が12日、佐賀県上峰町の「大幸園」で指され、藤井聡太王将(20=竜王、王位、叡王、棋聖との五冠)が挑戦者の羽生善治九段(52)を88手で破り、通算成績を4勝2敗として初防衛に成功した。五冠の若き天才と、通算タイトル100期を目指すレジェンドがぶつかった世紀の一戦は、藤井王将に軍配。番勝負で初めて相まみえた両雄による一進一退の大熱戦は難解な局面の連続で、将棋ファンを大いに魅了した。
憧れ続けた希代のスーパースターとの、初めて迎えた大舞台。世間の注目を大きく集めた2カ月間を勝利で締めくくり、藤井王将は静かに頬を緩ませた。
2連続で黒星を喫した後手番でリベンジした。角換わり早繰り銀の将棋は初日からリードを拡大し、反撃の間も与えず押し勝った。熱戦続きだった6局を、「考えても分からない局面が多くて将棋の奥深さを感じましたし、盤上に没頭して指せました。非常に充実感のあるシリーズでした」と振り返った。
羽生九段の繰り出す多彩な戦型への応手に、試行錯誤だった。藤井王将が多く指してきた最新型の角換わりや相掛かり以外にも、雁木や横歩取りなど、6局全てが違った戦型になった。新鮮な局面の連続に、「経験の少ない将棋も多く、局面を考えることができるのは非常に楽しい時間でした」と子供のように語った。
初の番勝負を経て、羽生九段に対する印象も変化した。「今まで以上に柔軟さや積極性を感じる場面が多かった。本当に良い手をたくさん指された。少しやりづらそうに見えるところを掘り下げて、そこに可能性を見いだす強さだと感じました」。羽生九段の「持ち時間8時間も長いようで短い」との言葉に「自分自身も言葉の意味を実感した」。楽しくて、あっという間に過ぎ去った時間を堪能した。
最年少六冠へ王手をかけている棋王戦第4局は19日に指され、4月からは七冠目奪取を狙う名人戦七番勝負が控えるなど、年内での八冠独占に向けていよいよ佳境となる。またしても踏み込む新たなる歴史のステージへ「しっかりいい状態で臨みたい。少しずつでも実力を伸ばしていきたい」と力を込めた。