藤井聡太新棋王 20歳8カ月最年少六冠 羽生九段以来史上2人目 年内八冠へ、名古屋発東京行き新幹線「静岡ぐらい」
将棋の第48期棋王戦五番勝負第4局が19日、栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」で指され、藤井聡太竜王(20=王位・叡王・王将・棋聖との五冠)が渡辺明棋王(38=名人との二冠)に132手で勝利し、対戦成績3勝1敗で棋王を初奪取。史上2人目の六冠を20歳8カ月の最年少で達成した。同日午前放送の第72回NHK杯テレビ将棋トーナメント決勝戦では、佐々木勇気八段(28)に勝利し初優勝。今年度、参加資格のある4つの一般棋戦を全て制し、将棋界初の四冠を達成。2つの金字塔を打ち立てた。
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最年少タイトルを次々に塗り替えてきた若き天才が、29年ぶりに史上2人目となる最年少記録を打ち立てた。
それでも藤井新棋王は「まだまだ実力的には足りないところが多い。その立場にふさわしい将棋が指せるよう、一層頑張らないといけない」と淡々と語った。
約1年ぶりに冠を増やし、羽生九段が1994年に打ち立てた最年少記録・24歳2カ月を3年6カ月も更新した。五冠は藤井新棋王含めて4人いるが、六冠以上は羽生九段のみ。まさに“天才の領域”となる。
前局は先手番ながら詰みを見逃して大逆転負け。本局も一筋縄ではいかなかった。順調に優勢を築いていた直後、藤井新棋王の緩手でほぼ五分に。中終盤は一進一退の大激戦となったが、最後は渡辺名人の隙を見逃さずに追い詰めた。「まだ実感があるわけではないんですけど、大変な将棋ばかりだったけど、結果を残すことができてうれしく思っています」と振り返った。
約2週間の充電期間を経て、4月5、6日に名人戦が開幕する。またも渡辺名人との顔合わせとなるが、「重要な対局が続くので、少しでも強くなれるように頑張りたいと思います」と油断はない。
タイトル八冠の内、六冠を手にし、年内八冠も見えてきた。“乗り鉄”である藤井新棋王には、自身の現在地を地元である名古屋駅から東京駅の新幹線で例えると、どこ付近かという質問が飛んだ。
「タイトルは増やせているんですけど、内容的には大変なところが多いので、あまり近づいている感覚はそれほどない。なので…静岡ぐらいでお願いします」と笑顔。
八冠制覇へ残り二冠だが、藤井新棋王の思い描く終着点はまだまだ先のようだ。
【祝福の声】
◆師匠の杉本昌隆八段「棋王獲得おめでとうございます。最年少での六冠達成を喜ばしく思います。過密なスケジュールの中、着実に勝ちを積み重ねる姿勢には驚くばかりです。棋王戦はその昔、大師匠の板谷進九段が当時の名人含めた歴代の「三人の名人」(大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、谷川浩司十七世名人)に勝ち、挑戦者決定戦で敗れた心残りのある棋戦です。今回の孫弟子の快挙を喜んでおられることでしょう。さらなる活躍を期待しています」
◆佐藤康光日本将棋連盟会長「この度は棋王位獲得並びに史上最年少での六冠達成、誠におめでとうございます。毎年度8割を超える勝率で実績を積み重ねられる素晴らしい活躍ですが、今年度の強敵を連破し続けての結果は20歳という若さと思えない凄みを感じます。今後も体調にご留意され、さらなる高みを目指される事を期待いたします」
【六冠までの道のり】
◆2020年7月16日、第91期棋聖戦第4局 最年少タイトル獲得(17歳11カ月) 渡辺三冠に3勝1敗。30年ぶりに更新し、「非常にうれしい結果」
◆2020年8月20日、第61期王位戦第4局・最年少二冠(18歳1カ月)。木村一基王位に4連勝。
◆2021年9月13日、第6期叡王戦第5局・最年少三冠(19歳1カ月)。豊島将之叡王に3勝2敗。
◆2021年11月14日、第34期竜王戦第4局・最年少四冠(19歳3カ月)。豊島竜王に4連勝。「最高峰のタイトルなので光栄。重みを感じます」
◆22年2月12日、第71期王将戦第4局・最年少五冠(19歳6カ月)。渡辺王将に4連勝。