坂本龍一さん死去 71歳 がん闘病も力尽く 盟友追うように

 テクノポップバンド「YMO」の活動や、「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」などの映画音楽を手がけた世界的な音楽家で、“教授”の愛称で親しまれた坂本龍一(さかもと・りゅういち)さんが3月28日、都内の病院で死去していたことが2日、分かった。71歳。遺志により、葬儀は近親者のみで行われた。ステージ4の末期がんであることを2022年6月に公表し、治療を続けていた。最後まで音楽と向き合い、環境や平和へのメッセージを発信し続けた。

 坂本さんは「Ars longa,vita brevis.(芸術は長く、人生は短し)」というラテン語の一節を好んでいたという。所属事務所によれば、治療を受けながらも「体調の良い日は自宅内のスタジオで創作活動を続け、最期まで音楽と共にある日々」を送ったが、1月に死去した盟友・高橋幸宏さんを追うように旅立っていった。

 亡くなる2日前の3月26日には、音楽監督を務める東北ユースオーケストラの演奏会をリモートで見守り、マーラーの交響曲第5番が演奏された直後、会場に「superb!Bravissimo(拍手×5)」とのメールを送った。

 死去2日後の同30日には、共同通信がインタビューを配信。東京・明治神宮外苑の再開発に反対し、小池百合子都知事らに「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではない」との手紙を送った坂本さんは、統一地方選を前に「一人一人が住みたい場所のビジョンを持ち、共有されて都市を形づくる。その先に政治家を選ぶということがある」と命尽きてなおメッセージを寄せた。

 その中には「音楽制作を続けるのも難しいほど気力・体力ともに減衰しています。残念ながら手紙を送る以上の発信や行動は難しい」と、命の限界が近づいていることを思わせる一文もあった。

 坂本さんは14年7月、中咽頭がんを公表。放射線治療を受けた。がんは『寛解』したはずだったが、復帰から5年後の20年、直腸がんと診断された。21年1月には、直腸の原発巣(最初にがんが発生した場所)と肝臓、リンパに転移した腫瘍、大腸を30センチも切除する大手術を受けた。

 21年10月、12月の2回に分け、両方の肺に転移したがんを摘出。病巣を全て取り除くことはできず、投薬治療を続けていた。

 死を現実のものとして向き合っていた坂本さんは22年9月中旬、東京・NHKでピアノ・ソロコンサートの収録を数日間かけて行った。12月11日に世界配信するにあたって「ライヴでコンサートをやりきる体力がない--。この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」とのコメントを発表。この配信ライブが、最後のパフォーマンスとなった。

 ◇坂本龍一(さかもと・りゅういち)1952年1月17日生まれ、東京都出身。ビートルズ、ドビュッシー、ゴダール、吉本隆明、埴谷雄高らに影響を受ける。東京藝大在学中に活動を開始。78年、細野晴臣、高橋幸宏とYMO結成。世界的人気を博す。個人でも大島渚、ベルトルッチ、シュレンドルフ、アルモドバルら巨匠の映画音楽を担当するなど国際的に活躍。俳優としては「戦場のメリークリスマス」、「ラストエンペラー」で大役を演じた。

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