南佳孝×松本隆氏「ぎゃんぐ」の旅50年まだまだ2人で! コンビで73年デビュー作リリース
「スローなブギにしてくれ」や「スタンダード・ナンバー」などのシティポップ名曲で知られるシンガー・ソングライター(SSW)の南佳孝(73)が今年、デビュー50周年を迎え、盟友の作詞家・松本隆氏(73)の作品のみで構成した2枚組ライブアルバム「南佳孝 松本隆を歌う Simple Song 夏の終わりに」を今春、発表した。同学年でデビュー前からの付き合いである松本氏との半世紀を、南が語った。
2人は1972年の秋口に知り合った。プロデュースするアーティストを探していた松本氏と、キャロル・キング、ギルバート・オサリバンら海外SSWの台頭を受けて曲を書き始めていた南は、最初から気が合った。
文学のチェーザレ・パヴェーゼやロートレアモン、前衛芸術のマルセル・デュシャン、映画の「去年マリエンバートで」に「あの胸にもういちど」。「むちゃくちゃ合ったんですよ、セレクションしてるものとか好きなものが。前衛の話をしても反応してくれる」。
意気投合した2人は「都会的な、洗練された映画みたいなアルバム」を作ろうとし、松本氏が書きためていた歌詞からデビューシングル「おいらぎゃんぐだぞ」とデビューアルバム「摩天楼のヒロイン」を生む。フォーク全盛期、都会っ子2人は「真逆」の音楽をやろうとしていた。
「映像が浮かぶようなもの」を目指した「摩天楼-」はリスナーを別世界に連れ出すような名盤だが、73年の日本にはまだ受け入れる土壌がなかった。
南は76年にソニーからアルバム「忘れられた夏」で“再デビュー”する。世間には雑誌「ポパイ」に象徴される西海岸、トロピカルムードが到来し、南の音楽が求められるようになっていった。
「忘れられた夏」では全作詞を手がけたが本来、作詞は苦手で、作詞家を必要とした。ソニーでは「モンロー・ウォーク」や「プールサイド」など来生えつこ氏との名コンビが生まれ、「スローなブギにしてくれ」や「スタンダード・ナンバー」など松本氏との名コンビも復活した。
「来生さんと松本隆に関しては、何も言ったことないんじゃないかなあ。ふだんこうやって話してる時にお互い感じるものなんですよ。それをお二人はすごく拾い取ってくれて。同年代を生きてきてるところの言葉の選び方。共通しているのは映像が浮かぶこと」
松本=南コンビの楽曲は約80曲にも上る。南は松本作品の魅力を「誇り高きダンディズム」と指摘。「センシティブ」だという。
出会いから50年がたった昨年、本作の基になったライブには松本氏もゲスト出演した。「人気すごいですよ。最初会って付き合いだして、だんだんと見ていくと、松本隆って巨人なんだなって思いはますますありますね」と、旧友の偉大さを再確認したという。
半世紀の軌跡がライブ盤でまとまり「良かったな」と思う一方で「もっともっと何か作りたい」と創作意欲にも駆られている。「結局みんな死んじゃうんだったら、何かもの作ってた方が面白いなと思って、松本にはやろうぜとは言ってるんですけどね。何か新しいもの作ろうって」。
73歳になった「ぎゃんぐ」たちの旅は、まだまだ続きそうだ。
◆南佳孝(みなみ・よしたか)1950年生まれ、東京都大田区出身。73年、アルバム「摩天楼のヒロイン」でデビュー。79年のヒット曲「モンロー・ウォーク」を80年、郷ひろみが「セクシー・ユー」としてカバーし大ヒット。81年、「スローなブギにしてくれ」が大ヒット。84年、「スタンダード・ナンバー」を薬師丸ひろ子が「メイン・テーマ」としてカバーし大ヒット。2010年からFM COCOLO「NIGHT AND DAY」でパーソナリティーを担当。
◆南佳孝50thAnniversary Live2023
4月30日 ビルボードライブ横浜
5月11日 ビルボードライブ大阪
5月26日 ビルボードライブ東京