市川團子が猿之助代役の千秋楽 観客涙と拍手止まらず「舞台上でも進化が止まらない」
18日に自宅で両親とともに倒れているのが見つかり、救急搬送された歌舞伎俳優・市川猿之助(47)が座長を務める東京・明治座「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」の昼の部「不死鳥よ 波濤を越えて」が27日、千秋楽を迎えた。猿之助が演じていた主人公の平知盛を、猿之助のいとこ・市川中車(香川照之=57)の長男・市川團子(19)が20日から代演した。
本公演は昼夜の部とも猿之助が主演する座長公演。團子は本来昼の部には出演していなかったが、猿之助の救急搬送を受け、1日だけの稽古で代演を8日間勤め上げた。クライマックスでは團子の熱演にすすり泣く声が客席から漏れ、幕が下りて上演終了のアナウンスが流れた後も、多くの観客が席を立たず、5分間近く拍手が鳴りやまなかったという。
猿之助を目当てにチケットを購入したという70代女性は、「こういうことがあったんで、見に行くか悩んだけど、團子さんの演技がすばらしく、代役していただいて良かった」と感無量。50代男性は「團子さんの演技を見るのは初めてだったので、どうかなと思っていたけど、不安なく最初から安心して聞けた」と語った。
初舞台から観劇している團子のファンで、本演目も20、21日、この日と3度見届けたという20代女性は、「感動しました。團子さんはすごく努力家で、舞台上でも進化が止まらない人なので、1週間前よりも役を自分のものにしていた。初日に不安だなというところを翌日には全部修正していて、先週時点ですごいことになるだろうなと思っていたが、予想通りでした」と涙ながらに称賛し、「代役ばかり取り上げられるのが少し悔しい」と複雑な胸中も明かした。
本演目は1979年に三代目市川猿之助(現・市川猿翁)主演で初演され、44年ぶりに復活。壇ノ浦の戦いで戦死したとされる平知盛が一命を取り留め、海を渡り、幻の都ローランに落ち延びたというストーリーで、宝塚歌劇の演出を盛り込んでいる。
猿之助の代演を中村隼人(29)が務める夜の部「御贔屓繫馬」は28日に千秋楽を迎える。