世界三大映画祭の一つ「第７６回カンヌ国際映画祭」の授賞式が日本時間２８日（現地時間２７日）に南フランスで行われ、コンペティション部門に出品されていたビム・ベンダース監督作品「パーフェクトデイズ」（日本公開未定）に主演した俳優・役所広司（６７）が男優賞を受賞した。日本人の男優賞受賞は、２００４年「誰も知らない」の柳楽優弥（３３）以来、１９年ぶり２人目。また、脚本家の坂元裕二氏（５６）が是枝裕和監督作品「怪物」で脚本賞を受賞。日本作品の脚本賞受賞は２１年に「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督と大江崇允氏以来２度目で、日本の２作品がカンヌのコンペティション部門で主要賞を同時受賞するのは初の快挙となった。

　日本映画界の底力が、世界を揺るがせた。７６回の歴史で初めての、カンヌ主要賞Ｗ受賞。栄えある男優賞に輝いた役所は「僕は、賞が大好きです」とジョークから入り、「でもこうやって、華々しいカンヌ映画祭でスピーチするのは、あまり好きじゃない」と、謙虚に笑みを浮かべた。

　そこから、カンヌ映画祭や審査員、上映を見た観客らに感謝のコメント。続けて映画を作成したファーストリテイリングの柳井康治取締役、さらにベンダース監督や脚本家、キャストにスタッフ、事務所スタッフや妻にまで感謝を述べ続けた上で「これ、もらって帰ります」と、控えめながら誇らしげにトロフィーを掲げた。

　日本アカデミー賞では最優秀主演男優賞を３回、各種は計２０回以上受賞し、世界中でも数々の賞を獲得してきた役所が、ついにたどりついた世界三大映画祭での栄冠。カンヌでは１９９７年、主演した今村昌平監督作品「うなぎ」がパルムドールを獲得し、監督の代理としてトロフィーを受け取ったが、「今回は監督もすぐそばに居ましたし、本当に一緒にスタッフ達と受賞を分かち合えた」と感無量の様子だった。

　スピーチの冒頭で飛ばしたジョークには「ちょっとウケるかなと思って言ったんですけど、半分ぐらいスベってましたね」と苦笑い。さらに「やっと柳楽君に追いついたかなと」と、賞の“先輩”への思いも冗談めかして口にし、「いろんな男優賞をいただきましたけど、この賞に恥じないように頑張らなきゃいけないと思います」と表情を引き締めた。

　“世界の役所”として、今後は海外作品からのオファーが増加することも想定される。それでも役所は「いい作品、自分の表現が役に立つようないい作品があれば参加したい」としながらも、「基本的には、自分たちの国の映画で世界中の人たちに楽しんでもらえるのが、一番の早道かなと思います」とキッパリ。日本映画界をけん引する誇りと決意を、改めて示した。