野球が大好きで高校時代は「ショート」日本映画界にあって名遊撃手でした 元本紙記者が中島貞夫監督悼む
娯楽映画の巨星が落ちた。「やくざ戦争 日本の首領(ドン)」3部作や「極道の妻たち」シリーズなどで知られる映画監督で脚本家の中島貞夫(なかじま・さだお)さんが11日夕、肺炎のため京都市内の病院で死去していたことが15日、分かった。88歳。千葉県出身。葬儀は家族葬で行われた。喪主は長男純太(じゅんた)さん。多くの映画スターが、巨匠を悼んだ。
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デイリースポーツで2014年の正月明けから秋口にかけて、中島貞夫さんを取材して「中島貞夫 傑作選劇場」のタイトルでコラムを連載した。子供の頃から東映映画の大ファンだった私は、京都のご自宅に伺うのが楽しくて仕方なかった。
デビュー作「くノ一忍法」(1964年)に始まり「にっぽん’69 セックス猟奇地帯」(69年)、「893愚連隊」(66年)、さらには「あゝ同期の桜」(67年)、「まむしの兄弟」シリーズ(71年~)、「やくざ戦争 日本の首領」(77年)、「序の舞」(84年)など、ジャンルはなんでも来いだ。
「エロと暴力を描く東大出の監督」と書かれたことがあるが、譲れぬ持論は「人間の本質を描く点では変わらない」だった。
野球が大好きで高校時代は「ショート」を守っていた。「遊撃の美学 映画監督中島貞夫」(2004年)という著書があるが、なるほど遊撃は守備範囲が広い。足の速さや肩の強さに高い判断能力、走・攻・守のバランスが求められる。
中島さん、あなたはまさに、日本映画界にあって名遊撃手でした。ご冥福を心からお祈りいたします。(元デイリースポーツ記者・菊地順一)