国民的人気を誇った映画シリーズ「男はつらいよ」の源公役などで知られ、昨年１２月９日に虚血性心不全によって７８歳で亡くなった俳優の佐藤蛾次郎（さとう・がじろう、本名忠和＝ただかず）さんの「お別れの会」が２日、都内で行われた。「男は－」シリーズに出演した前田吟（７９）や山田洋次監督（９１）ら関係者が出席。蛾次郎さんと最後のお別れをした。

　白を基調とした祭壇の中央には、本人も気に入っていたという２０００年頃の宣材写真の遺影が優しくほほ笑んでいた。さらには蛾次郎さんの遺骨も置かれた。長男で俳優の佐藤亮太（５０）は「こうして、最後に仕事をしてもらおうと。こちらに鎮座して皆さんを見てもらおうと思った」と意図を説明。さらに、おなじみの帝釈天の半纏（はんてん）や台本のほか、家族写真や愛用品、聖火ランナーを務めた際に使用した８４年・ロサンゼルス五輪の五輪トーチなどが会場内に展示された。

　あいさつでは、山田監督が「５０年以上前」という蛾次郎さんとの出会いから思い出を語り「役者としての一つの理想だったと思う。渥美さんが寅さんとして死んだように、蛾次郎くんは源ちゃんとして死んだのではないか」としのんだ。献花後には「僕もようやく彼にお別れが言えた」と感謝した。

　山田監督に続いてあいさつした前田も「彼の良いところはとにかく人に好かれる。特に大スターに。松田優作、千葉真一さんも。渥美清さんもそうだった。うらやましかったな」としみじみ。残念ながら送る会を欠席した倍賞千恵子は手紙をよせて、前田が代読。思い出を振り返り「（男はつらいよシリーズの）みんな（天国に）いったでしょう。さみしくなくて良かったね。ありがとう、がじさん。千恵子こと、さくら」と締めくくった。

　長男・亮太は最後のあいさつで、生前の蛾次郎さんは「俺が行っても生き返るわけじゃないじゃん」と他人の葬儀などは好まなかったと明かしながら「とうちゃん、みんな手伝ってくれたよ。お別れの会とか好きじゃないの分かっているけど、お別れしたいじゃん。（天国から）母ちゃんとともに温かく見守っていてください」と涙ながらに語った。