【中村竜太郎のタイガー&ドラゴン】Netflix「ルーシー・ブラックマン事件」は必見!

 「あんな卑劣な人間がいるなんて思わなかったね」。勤務年数34年のベテラン女性警部補は事件を振り返りこう語った--。

 2000年に起きたイギリス人女性ルーシー・ブラックマンさんが織原城二(受刑者)にレイプされ殺された事件は、日本の安全神話を覆すような衝撃的なものだった。主に外国人女性を標的に百人以上の犠牲者が確認され、その行為は大富豪である彼の別荘でビデオに収められていた。そのドキュメンタリーがネットフリックスのオリジナル作品『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』として制作され、最近配信された。部門別配信でランク入りするなど世界中で視聴され大きな反響を呼んでいる。当時捜査に関わった多くの刑事が顔出し実名で出演し、詳細な証言をもとにストーリーが進んでいく。

 「末尾が3301の携帯電話の番号。これが手帳に書いてあった」「織原は収集癖が強くてですね、織原がやった行為がビデオに映っていると」「当時の捜査員は怒りしかなかった」「この犯人は人を人と思っていない。単なる人形で遊んでいるのかなっていう印象を持ちましたですね」「本当にかわいそうだと思いましたね」

 執念の捜査を続けた彼らの声は圧倒的なリアリティがあり、すごい引力で引き込まれる。

 手前味噌で恐縮だが、筆者もこの作品に協力し出演。実はメディアや警察が動く前に偶然彼女の失踪を知ったのだが、劇中、筆者はこう語っている。

 「ゲストハウスを経営する私の友人から連絡がありまして、『うちのゲストハウスに住んでいるルーシーっていう21歳の女の子がいなくなって連絡が取れないんだ』と。『すごく心配だ』と」

 ブリティッシュエアのCAを辞め、憧れの日本にやってきた彼女は、六本木のインターナショナルクラブでアルバイトしていたが、そこで知り合った大金持ちの客、織原にデートに誘われて毒牙にかかってしまった。最初に相談されたときのことを思い出すと、単に誰かがいなくなったという雰囲気ではなく、ただごとじゃない“何か”を感じたのは間違いなかった。まさかその後、あのような展開になるとは思わなかったが。そしていま、このドキュメンタリーで初めて知った事実もあった。とにかくすばらしい作品。ぜひ多くの人に観てほしい。

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