【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】「高座の維持」と「講談人気構築」へ!琴調会長奮闘中

 「胃が痛いほどの毎日ですよ」。少し前、苦笑いでそう話していた講談師・宝井琴調(68)が今週、やっと安どの表情を見せた。

 8月8日にスタートしたクラウドファンディング「講談定席継続計画~明日に向かって打て張扇」が今月3日、当初の目標金額500万円を突破したからだ。

 今年4月、講談協会の第8代会長に就任した。その際に強く意識したことは「高座の維持ですよね」

 琴調が神妙な表情でそう話す背景には、同協会の精神的支柱になっていた国立演芸場とお江戸日本橋亭が、来年から長期にわたり建て替え工事に入ることがある。特にお江戸日本橋亭は、同協会が定席興行を行ってきた場所。それゆえ「そこがしばらくなくなることがいちばん痛い」と頭を抱え込んだが、そう落ち込んでばかりもいられない。

 「現在、講談協会の前座が12人に増えました。彼らが勉強する場所を確保しなければいけない」とあちらこちらを探した結果、東京・四谷に荒木町舞台「津の守」を見つけることができた。

 「10月から模擬的に公演をしますが、正式には来年から。元日から毎月1日2日3日を、定席として押さえました。日本橋亭が出来上がるまでの会場費、運営費をご支援いただきたくクラファンをお願いした次第です」

 20畳の会場に約40人。そこでの定期的な開催、常に満員御礼にすることを目標にすると同時に、琴調はさらにその先を見据える。

 「一つ一つの興行に足を運んでくださる強いお客さんを作ることです。いずれ日本橋亭が再開した際、200人の会場に50~60人しか入らない、じゃ顔向けができない。常に会場の7割8割が埋まるお客さんを呼べるよう、講談協会の幹を太くしたい」と、神田伯山(日本講談協会所属)人気に頼りすぎない講談人気の構築に力を注ぐ。

 この秋には一龍斎貞鏡(37)が、来春には宝井梅湯(47)が四代目宝井琴凌(きんりょう)を襲名し真打ちに昇進するという慶事続き。名跡「琴凌」は88年ぶりに復活するめでたさだ。

 「高座の維持」と同時に琴調は「組織の法人化も視野に入れないと」と明かす。会長任期は2年。目に見える成果が、若手講談師を鼓舞する。(演芸評論家)

 ◆渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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