カシアス内藤氏 谷村さん死去「ありがとうしかない」アリス代表曲『チャンピオン』モデル
フォークグループ「アリス」のリーダーで、「チャンピオン」、「昴」、「サライ」など数々の名曲を世に送ったシンガー・ソングライターの谷村新司(たにむら・しんじ)さんが8日に病院で死去していたことが16日、分かった。74歳。大阪府出身。葬儀は近親者のみで15日に行った。
谷村さんが作詞作曲したアリスの代表曲「チャンピオン」のモデルとなった元プロボクシング東洋ミドル級チャンピオン、カシアス内藤氏(74)が16日、会長として後進の指導に当たる横浜市内のE&Jカシアス・ボクシングジムで取材に応じ、思い出を語った。
かつて咽頭がんで余命宣告を受けながら復活した内藤氏は「余命1カ月なんて言われてる時に、(谷村さんが)面会に来てくれた。その後も『君オッケーだよ、大丈夫だよ』って言ってくれた。本来なら俺が先に死ぬんだよ。今回のことはとてもショック」と驚きを隠せなかった。
谷村さんは内藤氏を描いたノンフィクション「一瞬の夏」の作家・沢木耕太郎氏の紹介で78年に内藤氏と知り合った。老いた王者が若き挑戦者に敗れ去るという、日本のポップソングでは異色の歌詞を激しく歌い上げた「チャンピオン」は、アリス唯一のオリコン週間シングルチャート1位を獲得した大ヒット曲となった。
当初は自分がモデルだと知らなかった。「試合で負けた後、カラオケを沢木さんとか谷村さんと行って『それ君の歌だよ』。それまではガンガン歌ってたんだ。それっきり歌わないからね。恥ずかしくなっちゃって」と笑い、「今でもあの曲はやっぱり俺を頑張らせてくれるよね。奮い立たしてくれるよね。自分が吸い込まれるんじゃないか、ワクワクしてついて行っちゃいそうな。選手の気持ちがよく分かってるんだなって思う。心の中が表面化された曲」と谷村さんの観察力、洞察力に舌を巻いた。
「すごく優しくしてくれたし、心配性って思うくらい気を使ってくれる。至れり尽くせりってああいう人のことを言うんだろうね。相手には気を使わせない。すごくフレンドリー。壁がないからいつ会っても気まずさがない」と人柄をしのんだ内藤氏。「ありがとうしかない。ただ一つだけ、ありがとう」と谷村さんに感謝した。