さらば谷村新司さん 数多の名曲遺し逝く 3月に急性腸炎手術 闘病も復帰かなわず

 ライブでファンに優しくほほ笑む谷村新司さん=2007年4月
 谷村新司さんの祭壇
2枚

 陽はまた昇らず…。フォークグループ「アリス」のリーダーで、「チャンピオン」、「昴」、「サライ」など数々の名曲を世に送ったシンガー・ソングライターの谷村新司(たにむら・しんじ)さんが8日に病院で死去していたことが16日、分かった。74歳。大阪府出身。葬儀は近親者のみで15日に行った。後日、しのぶ場を設ける。今年3月に急性腸炎の手術を受けて療養を続けていたが、復帰はかなわなかった。

 アリスの50周年記念ツアーも、ソロの公演も、永遠に延期されることになった。

 谷村さんと親交がある音楽評論家の湯川れい子さんはこの日、都内で取材に応じ「奥さまに伺ったんですけど、なかなか腸が戻らないと、9千分の1くらいの珍しい血液型で闘病が大変だと伺っていました」と、闘病生活の一端を涙ながらに明かした。

 谷村さんは3月、急性腸炎のため手術を受けた。その後、ソロ公演やアリスのツアーを延期。谷村さんは「残念ながら(回復に)時間がかかっており」とスタッフ公式Xで説明し、担当医の「ツアーの敢行は難しい」という判断を明かした。

 6月にはスタッフが「来年からの復帰に向けて、年内は治療に専念」と報告。8月の「24時間テレビ」に「歌いに行くことができず、ごめんなさい」と陳謝の言葉を寄せたのが、谷村さん最後のメッセージとなった。

 谷村さんは1968年、フォークグループ「ロック・キャンディーズ」としてデビュー。71年の解散後、堀内孝雄とアリスを結成した。72年にデビューし、ドラムスの矢沢透が合流。谷村さんと堀内がギターとボーカル、ソングライティングを手がけ、矢沢さんのビートがグループにロック色を加えた。

 75年にカバー曲「今はもうだれも」がヒットしたのを皮切りに「冬の稲妻」や「チャンピオン」などのヒットを連発し、スタジアムライブを行うなど、解散する81年までニューミュージックをけん引。アリスはその後も何度か再結成した。

 ソロでも「昴」が「ヨナ抜き音階」と呼ばれる日本的な旋律と古風な言葉選びで、日本にとどまらずアジア圏でも大ヒット。他にも山口百恵さん(引退)に提供した「いい日旅立ち」や、加山雄三と共作した「サライ」など、音楽史に残る名曲を生み出した。

 「セイ!ヤング」や「MBSヤングタウン」などでラジオパーソナリティーとしても人気を博した。上海音楽院で現代音楽を教えるなど音楽を通じた日中友好にも力を尽くし、2010年の上海万博開幕式ではアジアのアーティストを代表し「昴」を歌った。

 療養中も「また元気に皆さんの元へ歌を届けられるよう頑張ります」、「元気に再会できることを願って頑張ります」とメッセージを発していた谷村さん。その約束を果たすことなく、昴の元に旅立っていった。

 ◆谷村新司(たにむら・しんじ)1948年12月11日生まれ、大阪府出身。68年、ロック・キャンディーズでデビュー。71年アリス結成。72年、アリスがデビュー。ラジオDJとしても人気を博す。80年、ソロで「昴」が大ヒット。81年、アリスが活動停止。2009年、アリスが完全再始動。13年、芸術選奨文部科学大臣賞。15年、紫綬褒章。04年、上海音楽学院常任教授に就任。その後、東京音楽大学の客員教授に。愛称は「チンペイ」。

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