急死のもんたよしのりさん 実は細くて高い声だった 80年代を盛り上げたスター
大ヒット曲「ダンシング・オールナイト」(1980年)で知られるロックバンド「もんた&ブラザーズ」のボーカルで、シンガー・ソングライターのもんたよしのり(本名門田頼命=かどたよしのり)さんが18日朝、大動脈解離のため死去していたことが22日、分かった。72歳。神戸市出身。葬儀は故人の希望で、親族のみで行った。後日、お別れの会を開催する予定。
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特徴あるハスキーボイス、一度聴いたら忘れられない。意外にも若いころは、そんな声ではなかったという。「女の子に間違われたこともあったんや」という細くて高い声だった。リズム&ブルースの歌手を目指していたもんたさんは、きれいな声ではなく、しゃがれた声を手に入れたかった。そこで取った行動は、波止場に行って大声を張り上げ、声をつぶすことだった。
デイリースポーツ紙面の連載で、当時67歳のもんたさんを自宅やカフェで取材した。80年代を盛り上げたスター。気難しい人なのでは…こちらの予想に反して「気さく」という言葉がぴったりな人だった。サービス精神旺盛で、包み隠すことなくエピソードトークをしてくれた。気が付けば、いつも約束の時間をオーバーしていた。
神戸で寝具店を営む父に反対されながらも音楽の道へ。「これで売れなかったら辞めよう」と覚悟を決めた「ダンシング・オールナイト」がダブル・ミリオンを達成した。当時は2度目の上京で、都内でアパートを借りていた。近くにはすでにスターだった人気歌手・ジェリー藤尾さんの豪邸があり、夜、窓を開ければ、リビングからまぶしいくらいの光がもれていた。いつか自分もあの光に包まれたい、と曲作りに明け暮れた日々を語ってくれた。
最後に会った2年前「もっと元気な年寄りを増やしたい」と高齢化に向かう社会を危惧していた。もんたさんは手本を示すかのように、波止場仕込みのハスキーボイスで歌い続けた。「人間いつまでも生きられることはない、自然なこと。先送りしないで、今を一生懸命どう生きるか、やね」。ソウルフルな言葉が耳に残っている。合掌。(デイリースポーツ コンテンツ局長・佐藤利幸)