宝塚歌劇団謝罪もいじめ確認できず パワハラ否定「上級生の指導仕事の範囲内」木場理事長引責辞任
宝塚歌劇団は14日、劇団員の女性が急死した問題について宝塚市内で会見を開き、外部の弁護士らによる調査結果を公表した。木場健之理事長(60)は遺族に謝罪し「安全配慮ができなかった」と述べたが、「いじめやハラスメントは確認できなかった」とした。木場氏は12月1日付で引責辞任し、村上浩爾専務理事(56)が新理事長に就任する。劇団の会見を受けて遺族の代理人弁護士は都内で会見し「事実認定と評価は失当」と批判し、再検証を求めた。
木場理事長は冒頭「大切なご家族の命を守ることができなかったことを心よりおわびします」と深々と頭を下げ遺族に謝罪した。だが、いじめやパワハラについては「故人が長時間にわたる活動の中で精神的に負荷がかかった。上級生の指導についても仕事の範囲内」と否定。「指導内容、方法は社会通念に照らして不当とは言えない」とした。
亡くなった劇団員は、入団7年目までで上演される新人公演で「長の期」と呼ばれる最上級生。下級生をとりまとめる立場で、過重労働だったことは認められた。だが21年8月に、上級生にヘアアイロンを押しつけられ、やけどしたとする事案については、「アイロンが当たってやけどはよくあること」と、いじめではなく事故との認識を改めて示した。また「『うそつき野郎』『やる気がない』といった発言の有無は、すべて伝聞情報。実際に発言があったとは確認されていません」とした。
会見を受けた遺族側代理人は、いじめの有無について反論・再検証を求めたが、村上浩爾専務理事は「途中でのコメントは差し控えさせていただきたい」とした。ヘアアイロンの件についても、宙組プロデューサーの報告と遺族側の供述に相違があったことは認めた上で「そのようにおっしゃっているのであれば、その証拠となるものをお見せいただきたい」と語った。
遺族側が、劇団と上級生の謝罪を求めていることにも「責任は劇団にあると思っているので、まずはわれわれが謝罪、お話しさせていたただきたい」と、いじめはなかったとの立場から、上級生の加害責任に言及することはなかった。補償についても、村上氏が「しっかりさせていただきたいが、そこもまだ」と遺族側との話し合いができていないことも明かした。
さらに「宙組に配属されたことがこの結果を招いた」と遺族側がコメントしたことに、木場理事長は「歌劇団としては、特に宙組に問題があったというふうには考えておりません」と組としての問題との見方を否定。「ご遺族の方がどういう観点、どういうお気持ちで言葉を述べられたのかにつきましては、またお話をうかがいたいと思っております」と語った。
組織の体質改善に向けた本気度に関する質問には「宝塚歌劇にとって今回のことは危機的状況。強い危機感を持ってやりたい」と強調した。