タカラジェンヌ急死問題「遺族は納得できない」食い違う意見 報告書作成チームに疑問
宝塚歌劇団は14日、劇団員の女性が急死した問題について宝塚市内で会見を開き、外部の弁護士らによる調査結果を公表した。木場健之理事長(60)は遺族に謝罪し「安全配慮ができなかった」と述べたが、「いじめやハラスメントは確認できなかった」とした。木場氏は12月1日付で引責辞任し、村上浩爾専務理事(56)が新理事長に就任する。劇団の会見を受けて遺族の代理人弁護士は都内で会見し「事実認定と評価は失当」と批判し、再検証を求めた。
遺族側としては到底受け入れられる報告書ではなかった。川人博弁護士は、調査チームの報告書について長時間労働の認定がなされ、事実上、劇団員の死亡が業務に起因するものであると示唆したことなどを冷静に評価。その一方、ハラスメントを否定した点には「まったくもって偏した認定」と反論。「事実認定と評価は失当(不当)。劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している」と批判した。
遺族側は調査チームのヒアリングに対して、ヘアアイロン事件が起きた際、劇団員から家族に送られた「やけどされた」「ちゃいろになってる」などの悲痛なLINEの履歴、同居していた母親の「赤くなって3センチも皮膚がめくり上がっている状態だった」という証言などを提出。だが報告書では無視され、やけどをさせた事実を認定しなかったと指摘。「遺族は事実認定と評価について納得することはできない」とした。
また、上級生の「うそつき」などの言葉を用いた激しい叱責も指導の範囲内としたことは「縦の関係を過度に重視する風潮をそのまま容認し、一時代前の価値観に基づく思考」と強調。遺族はパワハラが否定され「大変落胆し、やるせない気持ちがある」と話したという。
さらに報告書を作成したチームにも疑問を呈した。川人弁護士は「外部委員会という話をしていますが、はっきりいって第三者委員会ではありません」と断言。日弁連が公表している第三者委員会の定義を満たしていないといい「阪急の顧問弁護士事務所ではない、という意味に過ぎない」と主張。現劇団幹部だけでなく劇団OB・OGなどへのヒアリング対象の拡大、医療やハラスメントの専門家の知見も盛り込んだ再調査を提言した。
「このままパワハラはありませんでした、長時間労働を強いたことは申し訳なかった、では、きっと劇団で同じことが起こる。宝塚始まって以来の事件だと言うのなら、この時に検証しないでいつ検証するのか。劇団のことを自分たちで改善できるようにしてほしい。それがご遺族の願いでもあります」と述べた。