「愛は勝つ」KANさん逝く 国民的応援ソング残し メッケル憩室がん公表 復帰への意欲抱きながら

 大ヒット曲「愛は勝つ」で知られるシンガー・ソングライターのKAN(本名・木村和=きむら・かん)さんが12日午後6時29分、死去した。61歳。福岡市出身。通夜および告別式は近親者のみで行われた。KANさんは今年3月、「メッケル憩室がん」と診断されたことを自ら公表。演奏活動を休止し、入退院を繰り返しながら復帰に向けて治療に励んでいた。お別れの会の実施は未定。

 世代を超えて愛された国民的応援ソングを生み、Jポップ史にその名を刻んだKANさんが旅立った。

 90年リリースのアルバム「野球選手が夢だった。」に収録された「愛は勝つ」が大ヒット。91年に「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」(フジテレビ系)のテーマ曲に採用されると、その前向きな歌詞とポップで力強い曲調は多くの支持を集め、瞬く間にダブルミリオンを突破した。

 同年のレコード大賞を受賞し90年代を代表する楽曲となったが、曲の持つパワーは時代を問わず人々を鼓舞。東日本大震災やコロナ禍でも歌い継がれてきた。

 トレードマークはピアノの弾き語り。02年には、フランス・パリに留学。現地の音楽学校に中途入学し、クラシックピアノを一から学び直した。帰国後は弾き語りで全国ツアーを敢行。精力的に音楽活動を行い、明るくユーモアあふれるキャラクターとともに各地にエネルギーを届けた。

 しかし、いつしか身体は病魔にむしばまれていた。今年3月に病気を公表。2万人に1人の発症といわれる希少ながんで、コンサートを中止し治療に専念することを決断した。

 それでも、復活に向け希望を失うことはなかった。所属事務所は公式サイトを通じ「最後まで復帰への想いは途切れることはありませんでした」と明かし、10月には、かつて留学した思い出の地であるフランスを訪問。レギュラーパーソナリティーを務めていたラジオ番組「KANのロックボンソワ」(札幌・STVラジオ)には回数を減らしながら出演を続けていた。

 SNSの最後の更新は、亡くなる5日前の11月7日付。「The Beatles【NOW AND THEN】(Official Music Video)やっと観た!やぁ…、いろんなことが素晴らしすぎて書き尽くせない。エンディングも美しいですね」と、敬愛するザ・ビートルズの“最後の新曲”について感嘆の言葉をつづったKANさん。命が尽きるまで、音楽への愛と情熱は不変だった。

 ◇KAN(かん、本名・木村和)。1962年9月24日生まれ。福岡県福岡市出身。87年4月にシングル「テレビの中に」および同名アルバムでデビュー。88年に公開された大林宣彦監督の映画「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群」の音楽を担当。90年発売のシングル「愛は勝つ」が大ヒットし、200万枚を超えるセールスを記録。翌91年の日本レコード大賞を受賞した。

 ◆メッケル憩室(けいしつ) 小腸に見られる袋状の突起物。胎児の際、へその緒と小腸をつないでいた卵黄管が消えずに残ったものを指す。最も頻度の高い腸管の奇形で、発生頻度は1~2%といわれている。それががんになる確率は200人に1人程度で、メッケル憩室がんは2万人に1人くらいの珍しい病気という。一般的には無症状だが、がんが腸の通り道を阻害することで、腸閉塞が引き起こされ、激しい腹痛、吐気、おう吐などの症状が現れることがあるという。

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