山田太一さん逝く 「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」テレビドラマ史に数多くの名作 89歳、老衰

 名作ドラマ「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」などで知られる脚本家の山田太一(やまだ・たいち、本名石坂太一=いしざか・たいち)さんが、老衰のため11月29日に川崎市の施設で死去したことが1日、分かった。遺族の意向で、フジテレビが報道各社に発表した。89歳。東京都出身。葬儀は故人の遺志により家族で行う。喪主は長男の石坂拓郎(いしざか・たくろう)氏。

 テレビドラマ史に残る数々の名作を生み出してきた山田さんが、静かに人生の幕を下ろした。

 長男の拓郎さんはコメントを発表し、「お世話になっていた川崎市内の施設にて老衰の為に息を引きとりました」と報告。「とても安らかで静かな旅立ちでした」とつづった。「仕事に対しては常に厳しく真剣でしたが、私たち家族にはユーモアにあふれ、楽しく優しい父として心に残っています」と日本を代表する脚本家として歩んできた山田さんの素顔を明かし、「これからも父の作品を楽しんでいただけたら幸いです」と記した。

 2017年1月に脳出血により自宅で倒れた山田さんは、体と言語にまひが残り、半年あまりの入院生活を送り、近年は療養生活を送っていた。

 早大卒業後、松竹大船撮影所に入所し、木下恵介監督の助監督を経て、1965年に独立。テレビドラマの脚本に進出すると、元特攻隊員の葛藤と戦後世代との確執を描いた「男たちの旅路」(NHK)で人気を博した。

 中流家庭が崩壊し再生していくさまを描いた「岸辺のアルバム」(77年、TBS系)では新たなホームドラマの作風を確立。主演の八千草薫さん演じる貞淑な主婦が不倫に走るなど、当時としては衝撃的な内容が話題を呼んだ。

 83年にスタートした中井貴一主演の「ふぞろいの林檎たち」(TBS系)では、学歴社会を背景に落ちこぼれの若者たちの劣等感をリアルに描写。第4作までシリーズ化され、不朽の青春群像劇として語り継がれている。

 他に「早春スケッチブック」など、ありふれた日常生活を通じて、時代が内包する社会的なメッセージを発し続けた。生前の山田さんは「固定化した現実を揺さぶるような『ああ、これが本当だね』と思うような現実を描くのが、テレビの一つの楽しさ」と語っていた。

 2010年代に入ってからは、東日本大震災や老いをテーマとした作品を発表。映画、舞台も手がけ、小説家としても活躍。「異人たちとの夏」は、イギリス映画“All of us Strangers”として24年に公開予定となっている。

 ◆山田太一(やまだ・たいち) 本名石坂太一。1934年6月6日生まれ、東京・浅草出身。早大で寺山修司と出会い、生涯の親友となる。卒業後は松竹に入社し木下恵介監督の助監督に。65年、フリーの脚本家に。「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」など多くの名作ドラマを手がけ、映画、舞台、小説、随筆なども執筆。長女宮本理江子氏はドラマ演出家、長男石坂拓郎氏は撮影監督。

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