東京都江戸川区の会社員・野本結梨香さん＝当時（１８）＝が今年６月に行方不明になり、山梨県小菅村の山林で遺体が見つかった事件で、警視庁捜査１課は１日、死体遺棄容疑で野本さんの交際相手だった職業不詳渥美遼馬容疑者（３１）＝江戸川区＝を再逮捕した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は２日、デイリースポーツの取材に対して事件の背景を解説し、逮捕につながる捜査を先導した警視庁の「捜１ユニット」についても言及した。

　警視庁によると、渥美容疑者は「野本さんの死体を山奥まで運び遺棄したことに間違いありません」と容疑を認めているという。

　同容疑者は、１１月２８日に死体遺棄容疑で逮捕された堀俊哉容疑者（３０）＝千葉県八千代市＝と同じ高校の同学年だった。渥美容疑者は「堀容疑者が運転する車で山奥まで行った」と供述し、堀容疑者も渥美容疑者に頼まれ、遺棄現場に一緒に行ったと供述した。

　渥美容疑者は５月下旬に東京都足立区の中古車販売店から借りた代車を返さなかった横領容疑で１１月２１日に逮捕されていた。

　小川氏は「ご遺体が発見されていない段階だったので、中古車店から借りた車両を返却していないということで、横領罪で逮捕し、自宅等の家宅捜索を実施、数多くの証拠品を押収した。共犯者の堀容疑者の供述等も含め、横領事件の勾留期限が満期になるところで死体遺棄容疑での再逮捕になった」と今回のタイミングについて説明した。

　経緯について、同氏は「７月下旬に江戸川区の空き地に車が乗り捨てられていたのを発見したということですが、車内後部座席には血痕が付着していた。その血痕を拭き取って証拠隠滅を図ることもなく放置したということは、相当、焦った状況にあったと思われる。その血痕は野本さんのＤＮＡと合致したという物的証拠があった。ただ、横領した車で遺棄はしていたのではなく、高校時代からの知人であった堀容疑者の車でご遺体を山梨に運んだ。運転は堀容疑者です」と説明した。

　今回の逮捕につながった要因として、小川氏は「警視庁の『捜１ユニット』という新しいセクションが動いた結果だと思います」と指摘した。

　警視庁は昨年８月、担当部署に捜査１課員の専門チーム「捜１ユニット」を発足させた。警視庁が受理する行方不明届は年間５千件以上で、中には事情があって行方をくらませる人も多いが、重大事件につながるケースもある。失踪直前の暮らしぶりなどから、自ら姿を消すとは考えにくい場合は事件の可能性が高いと考えられ、今回のように未成年者が事件に巻き込まれるケースも相次いでいる。

　小川氏は「『連絡が取れない』という届け出がある中、事件に巻き込まれたか否かが分からないケースがかなりある。それをどのように見極めるか。警視庁の捜査１課には通常の犯罪の捜査班と未解決事件を扱う特命捜査対策室があるが、新たに、捜索願いの届けから犯罪に巻き込まれたかどうかを見極めるチームが昨年発足した。当初は５名体制であったが、現在は１０名体制である。他の道府県警も同様の捜査は当然行うが、専門部署があるのは全国でも警視庁だけです」と補足した。

　野本さんは６月に行方不明になった後、１０月末ごろまでは無料通信アプリ（ＬＩＮＥ）で家族や友人に返信があったというが、その後は未読の状況が続き、１１月４日に家族が行方不明届を提出していた。その返信は既に亡くなっていたとみられる時期より後だったことから、偽装の可能性が考えられている。

　小川氏は「ＬＩＮＥの内容で不審な点に気づかれたのか、このままでは偽装していることがバレるということでＬＩＮＥの通信をやめ、野本さんのスマホを処分した可能性はある」と付け加えた。

　事件の状況についても不可解な点は多い。

　小川氏は「野本さんの血痕があった車の中で事件が起きたのか、それとも、ご遺体を搬送するところで血痕が付いたのか。また、渥美容疑者の自宅で靴底に血痕が付着した女性用と思われる靴も押収されており、血痕を鑑定した結果、被害者である野本さんのＤＮＡと一致している」と説明した。

　さらに、同氏は「渥美容疑者に頼まれ、野本さんのご遺体を自分の車で運んだという堀容疑者は『なにか分からない物体を運んだ』と供述しているが、それが人であることが分からないはずがない。渥美容疑者に運んでくれと頼まれて、中に何が入っているかを聞かないこともないでしょう。また、地元ではなく、人のいない小菅村まで遺棄しにいくということは明らかに意図があっての行動。５か月以上もの間、ご遺体は発見されなかった、それくらい、人が来ない場所を容疑者がどうして知っていたのか」と疑問点を挙げた。

　今後について、小川氏は「ご遺体を遺棄するに至った経緯、動機も含め、この犯行は渥美容疑者が１人でやって、堀容疑者は運んだだけなのか。あるいは、犯行にも堀容疑者が関わっていたのか。そういった行動についても究明していく必要がある」と解説した。