小金沢昇司さん死去 「売れていないけどいい歌手がいる」北島三郎の会話がきっかけ 元担当記者が明かすCM出演秘話
のど薬「フィニッシュ・コーワ」のCMで「歌手の小金沢くん」として一世を風靡(ふうび)した、演歌歌手の小金沢昇司(こがねざわ・しょうじ)さんが11日午前2時30分、呼吸不全のため、神奈川県内の医療機関で亡くなったことが15日、分かった。65歳。神奈川県出身。所属レコード会社の公式サイトで発表された。通夜・告別式は、遺族の意向により、近親者のみで執り行われた。お別れの会は未定。師匠の北島三郎(87)ら“ファミリー”から追悼のコメントが寄せられた。
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無名だった小金沢昇司さんがブレイクするキッカケとなったのはデビュー5年目の1992年、のど薬「フィニッシュ・コーワ」のCM。歌もセリフもなく“歌手の小金沢くん”として登場すると「あれは誰?」「本物の歌手か?」と日本中で話題となり、新語・流行語大賞にも選ばれた。
だが、そもそもなぜ無名の歌手が、CM出演のチャンスをつかんだのか。生前の小金沢さんが語ったところでは、実は自分の前に、CM出演していたのが、師匠の北島三郎だった。次の出演者を選ぶにあたり北島が「売れていないけどいい歌手がいる」と話し、先方も「売れてないけど良い商品なんだ」と交わした会話がキッカケとなり、同じような境遇だからなどの理由で、出演が決定したという。
全国的に話題となったCMだが、意外にも多くの人が視聴するゴールデン帯の放映はなく、流れたのは夜中や朝のスポットが中心。それだけインパクトがあったのだ。
「あのCMで、顔と名前を一気に覚えていただいた。女子高生から黄色い声援が飛び、女子大の学園祭にも呼ばれた」と当時を振り返っていた。しっかりチャンスをつかんだが、くしくもこれが歌手人生の全盛期だった。
その後も「顔と名前に加えて、歌も覚えていただかないと」と、必死に次なるヒットを目指していたが、念願の紅白出場は果たせなかった。
師匠・北島が「弟子で一番叱ったのは小金沢」と言うなど、若いころは、相当やんちゃだったそうだが、実際はとても穏やかでやさしい方だった。近年は酒気帯び事故で謹慎していたが、まだまだチャンスはあったはず。65歳。早すぎる。(デイリースポーツ・栗原正史)