「バウワウ」ギタリスト山本恭司 音楽でささやかな幸せを届けたい 悲しい現実…それでも「積み重ねていくのって大事なこと」
伝説のハードロックバンド「バウワウ」のギタリストとして世界的に知られる山本恭司(67)が昨秋、ソロアルバム「MINDPOWERS」をリリースした。2020年から4年連続でニューアルバムを発表したことになる山本が、コロナ禍における癒やしを意識した前作までとは異なり、「久々にロック色がかなり強いヤツ」を打ち出してきた意図を語った。
新作では本人の言葉通り、ロックギタリスト・山本恭司を存分に堪能できる。特にクライマックスの6~7曲目は圧巻だ。山本は「このところどんどんそれ(無意識)が解放に向かっている気がして。そういう気持ちが表れたんじゃないかな」と語り始めた。
コロナ禍が収束した影響は「あると思う」という。「お客さんもほぼマスクもしてないし、大声で声援も飛ばしてくれるし、コロナの前のライブが戻ってきた感じもあるんで、ストレートに、めちゃくちゃハッピーに受け止めて、今回のアルバムになったかなと思っています」
ライブ環境は明るくなった一方、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの戦闘など、世界情勢は暗たんとしている。
「戦争は絶対あっちゃいけないものだと思うけど、いくら反対と言っても止められない無力さは感じてますね。音楽の力でみんなが一つになれば止められるんじゃないかなという希望は100%捨てたわけじゃないけども、戦争によって潤う人たちや得する人たちの力が強大すぎて、なかなかあらがえない部分があったりする」
誰もが無力さを痛感している現実を踏まえた上で、山本は「ささやかでもいいので、幸せを見つけることってすごく大事だと思って。現状を変えるのは不可能に近いところで、与えられてる身の回りの世界で、けなげに咲いてる花を見つけて記念写真を撮ってあげたり、なんてこのみそ汁ってちゃんとダシがとられてておいしいのっていう、本当に小さな幸せを積み重ねていくのって大事なことじゃないかな」という。
山本は、音楽でそれを届けたいと言う。
「見に来られた方はホントにニコニコになって、ある人は涙を流される。僕からもお礼を言うけど、お客さんからもありがとうございましたって言ってもらえる。それってとても僕にとって幸せなことで、大事なことなんじゃないかな。心の片隅にでも温かい何かが生まれて、幸せになってもらえれば。大それたことは考えずに、それが今できることかなと思っている」
山本は小さな積み重ねの先に希望を見ている。「猪木が言ってることは正しい。元気があればなんでもできる。この世にいる時間は1秒1秒短くなってるって感じながら生きてるんで、やれるうちにやろうよと自分にも言い聞かせてるし、そういう気持ちで生きた方がいいんじゃないかな」と今の心持ちを語り、「大きな力にはなかなかあらがえないけど、変えられることなら変えたいよね、みんなでね」とメッセージを送っていた。
◆山本恭司(やまもと・きょうじ)1956年3月23日生まれ、松江市出身。15歳ででギターを始め、75年、BOWWOW結成。76年、1stアルバム「吼えろBOWWOW」発表。82年、スイスのモントルー、英レディング・フェスに出演。83年、解散。84年、VOW WOW結成。90年、解散。現在の活動はソロ、BOWWOW G2、バンド「WILD FLAG」、高校の同級生・佐野史郎との共演イベントなど多岐にわたる。