菅田将暉 黒沢清監督と初タッグ「とても楽しくぜいたくな時間」 転売屋が憎悪の連鎖に飲み込まれていく
俳優の菅田将暉(30)が、映画「Cloud クラウド」(9月公開)に主演することが12日、分かった。憎悪の連鎖と集団狂気の恐怖を描き出す作品で、世界のスリラー・ホラー映画の作り手たちに影響を与えてきた黒沢清氏(68)が監督、脚本を務める。巨匠と初タッグを組んでサスペンス・スリラーに挑んだ菅田は「とても楽しく、ぜいたくな時間でした」と充実感をにじませている。
菅田が演じるのは、「ラーテル」というハンドルネームを使い、転売で稼ぐ吉井良介。次第に顔の見えない世界で拡散する憎悪の連鎖にのみ込まれていく役どころだ。
作品への出演オファーを即決したという菅田は「生活の中に潜む、怖さとユーモア。黒沢監督の頭の中が毎日少しずつ開示されていく撮影は、とても楽しく、ぜいたくな時間でした。ピュアで歪な人間のアクションがたまらない」と昨年末まで約1カ月に及んだ撮影を回想。「とにかく完成が待ち遠しい。映画『Cloud』よろしくお願いします」と確かな手応えを明かした。
脚本も手がけた黒沢監督は、菅田が演じた主人公を「真面目でいちずな悪党という、現代日本映画ではほとんど見かけない人物」と表現。「主人公は、ささやかな金もうけによって少しでも人より優位に立ちたいと願う、ごくありふれた男。不用意に周囲の恨みを買い、最後には命を賭けた死闘へと引きずり込まれる」と説明した。
また、菅田の魅力について「誰の目もくぎ付けにする俳優。何と言ってもあの顔つき、そして声、立ち姿、奥の方にいても一発で菅田将暉とわかる唯一無二の個性があらゆる場面から立ち昇る」と称賛。「にもかかわらず、人混みの中だと市井の人物に溶け込んでしまう一般性、庶民性のようなものも同時に持ち合わせている」と評した。
今作での演技についても「難しい役を極めて繊細に、かつ堂々と演じてくれた」と話し、「繊細な部分が計算で、堂々としたところが資質なのか、あるいはその逆なのか、どちらかはわからない。いや、どちらも計算かもしれない。それとも全ては直感なのか。正体は不明だが、この正体不明こそ大スターの証」と最大級の賛辞を贈った。