藤井聡太棋王 今シリーズ初勝利 被災地のがれきから見つかった「特別な駒」で決戦
将棋の第49期棋王戦5番勝負の第2局が24日、石川県金沢市で行われ、藤井聡太棋王(21=竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖との八冠)が伊藤匠七段(21)を94手で破った。今シリーズ初勝利を挙げ、1勝0敗1分(持将棋)で防衛へ前進した。
藤井棋王が後手で戦型は角換わり。中盤は互いに1時間以上の長考を見せるなど激戦となったが、徐々にリードした。「攻め込まれてこちらの玉が薄い形が続いた。寄せ切られないようにどう指せばいいか難しい一局だった」と安堵(あんど)の表情で振り返った。
決戦の舞台で使用された駒は、漆を重ね塗りして字を浮き立たせた「盛り上げ駒」。能登半島地震で自宅が倒壊し、妻を亡くした石川県珠洲市の塩井一仁さん(63)が約3時間かけ、がれきから見つけ出した駒だった。アマチュア三段を持つ塩井さんは、自身の将棋も応援してくれていた亡き妻に思いをはせながら2人の対戦を見守った。
熱戦を繰り広げた藤井棋王は「少し珍しい書体。局面に入り込める感じがあった。倒壊された家の中から見つかった特別な駒。いい将棋にしたい気持ちは強くあった」とかみしめるように話した。
同学年同士の棋王戦。第1局は持将棋になるなど絶対王者といえども簡単な戦いではない。第3局は3月3日に新潟県新潟市で行われる。「しっかり準備をしていい状態で臨めるようにしたい」と力を込めた。