松本VS文春 「A子さん、B子さん特定して」「そんなアホな」やり取りを弁護士が解説
お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が女性に対し、性的行為を強要したと報じた週刊誌「週刊文春」発行元の文芸春秋と同誌編集長に対し、名誉を毀損されとして5億5千万円の損害賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日に東京地裁であった。文春側は「複数の女性が受けた同意のない性的行為は事実」などと請求棄却を求めた。松本側は「芸能活動に致命的な影響を与え、名誉を毀損することは明らか」と主張するとともに同誌に掲載された記事に登場した2人の女性、A子さん、B子さんについて「特定してもらいたい」と要請。文春側弁護士は「そんなアホなこと」と拒否している。かつて歌手デビューを果たした平松まゆき弁護士に両者のやり取りをQ&A方式で解説してもらった。
Q 文春側の弁護士が「特定しなければ否認できないなんて、そんなアホなことあるかいな」と一蹴しています。この辺がよく分かりません。どういうことなのでしょうか。
A 裁判上の「認否」(否認ではありません)というものは、相手の主張を認めるのか、否定して争うのかを明確にして、争点を絞り込むための作業です。
例えば訴状の中に「請求の原因」という項目があって、そこには多くの場合、訴訟の当事者についてや、原告側が考える5W1Hのようなことが書かれたります。この訴状に対して被告側が答弁書を提出するのですが、そこで「認否」を行います。例えば「請求の原因」で原告が
1 当事者
原告は都内在住で、株式会社〇〇の従業員である。
被告は株式会社〇〇の代表であり、被告の上司にあたる。
2 紛争の経緯
〇年〇月〇日〇時ころ、原告が帰宅準備をしていた際、被告は・・・・というようなことを書いたとします。
これに対して被告は、
1 当事者については認める。
2 紛争の経緯の一行目について否認する。被告は原告が主張する〇年〇月〇日〇時ころ、大阪出張中であり会社にはいなかった。
というように反論します。この、認めたり否定して争ったりすることを「認否」と言います。
Q それでは松本氏側の弁護士が「特定しなければ否認できない」と言っているのはどういうことなんでしょうか。
A おそらくですけど、文春側が出した答弁書に、女性A子さんやB子さんによる被害申告があるのでしょう。これについて松本氏側が、A子さんやB子さんと言われても、名前や容姿などを具体的に特定してもらえないと、答弁書に対する認否ができないと言っているのだと思います。A子さんやB子さんという人が実在して本当に飲み会に同席したかどうか、その時の様子がどうだったかは、少なくとも名前や容姿が分からないと認めることも争うこともできないというのが松本氏側の言い分のようです。実際の訴状や答弁書を見ていないので、あくまでも推測ですが。
Q 文春で報じられた性的強要行為が一切ないのであれば人物を特定しなくても否認できるものではないのでしょうか。
A そうですね。文春側の代理人も「1回もやったことがないのであれば、全部否認で、まったくのウソですよと言えばいい」と話しているそうですね。どこを認め、どこを争うのか、まさに認否の内容が気になるところです。