キダ・タローさん「死因は自然やな」93歳死去 生涯5000曲 円広志「自分らしい生き方貫いた人」
「浪花のモーツァルト」の愛称で親しまれた作曲家のキダ・タロー(本名・木田太良)さんが14日に死去したことが15日、所属事務所から発表された。93歳。兵庫県出身。葬儀・告別式は近親者のみで行われた。訃報から一夜明けた16日、所属事務所関連会社の社長を務め、公私で付き合いの深かった歌手でタレントの円広志(70)が大阪市内で取材に応じ、キダさんの近況や、最後までこだわっていた美学を明かした。
誰もが一度は聞いた、軽快で耳になじむメロディーを生み出し続けた巨匠が天国へ旅立った。
生涯で残した作品は5000曲とも言われる。コメディNo.1の「アホの坂田」が大ヒット。「かに道楽」、「出前一丁」、「アサヒペン」といったCMソングから、朝日放送の「プロポーズ大作戦」、「ラブアタック」のテーマなど、手がけた楽曲のジャンルは多岐にわたる。「一日で40曲作った」と、豪語していたこともあるという。
2月まで作曲活動を続け、3月29日には最高顧問を務めるABC「探偵!ナイトスクープ」の収録に参加。精力的に活動していたが、その後、転倒による負傷で入院すると、退院後も食欲が戻らず、体調を崩すことが増えていった。亡くなる数日前から体調が悪化。最期は大阪府内の自宅で、美千代夫人に看取られながら息を引き取った。
2022年からは円の個人事務所に所属を移した。公私で親交の深かった円は「何日か前から、もうだいぶ体調は悪かった。奥さまとはずっと話していたし、ある程度は覚悟していた」と、訃報に接した心境を語った。
近親者のみで行われた葬儀には作詞家のもず唱平氏らと参列。キダさんは「ちょっとやせていて、結構男前やった」という。生前、キダさんは「線香のにおいは嫌い」と話しており、葬儀でも焼香はなし。作り上げてきた軽快な曲が流れる中で最後の別れを告げた。
美千代夫人ですら大声を張り上げるところを見たことがない、というおおらかな性格。一方で人に弱みを見せることを嫌った。円ら事務所関係者に体調を崩していることを秘密にするよう頼み込み、3月の収録後、ナイトスクープから再度出演のオファーが届いたが、つえを突いて歩く姿を見られたくない、と断った。老衰という言葉を嫌い「死因は自然、やな」と、言い張ったという。
キダさんの人柄を問われた円は「まあ、けったいっちゃあ、けったいな人です」と笑う。人付き合いが得意ではなかったが、美千代夫人を深く愛した。人間関係で悩んでいることを相談した際、「あまり人に近づかんこっちゃ」と、アドバイスをもらったという。「あまり人に近づかないけど、近づいてきた人は大事にする。あの人の人生観というか、美学があったんと違うかな。自分らしい生き方を貫いた人なんだなって、思います」と、しみじみと語った。
◆キダ・タロー(本名・木田太良=きだ・たろう)1930年12月6日生まれ。兵庫県宝塚市出身。関西学院大学を中退し「義則忠夫とキャスバオーケストラ」のピアニストとしてキャバレーなどで活動。20代前半から本格的に作曲活動を始め、手がけた曲数は自称・5000曲。ABCの人気番組「探偵!ナイトスクープ」の最高顧問を務め、浪花のモーツァルトと呼ばれた。