藤井聡太叡王 逆王手!八冠陥落危機耐えた2勝2敗タイ 激闘「何がよかったかは分からない」 4連覇かけ6・20最終決戦

  将棋の第9期叡王戦5番勝負第4局が31日、千葉県柏市の柏の葉カンファレンスセンターで指され、かど番の藤井聡太叡王(21=竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖との八冠)が伊藤匠七段(21)を132手で破った。これで2勝2敗に戻し、この日は八冠陥落を回避して防衛でのシリーズ4連覇に逆王手をかけた。伊藤七段は3連勝ならず、初タイトル獲得は持ち越しとなった。決着する第5局は6月20日に山梨県甲府市の常磐ホテルで行われる。

 窮地に追い込まれていた藤井叡王が、八冠防衛へ執念を見せた。

 序盤から次々と手は進み132手で決着。藤井叡王は「かなり玉が薄い形になるので、ちょっと常に距離感が難しい将棋かなと思っていました」と厳しい表情で振り返った。開始30分で50手近くまで進んだ速い展開。「何がよかったかは分からないところです」と勝因もすぐには思いつかないほどの激闘を制した。

 相手の伊藤七段には小学生時代、大会で敗れて悔しさのあまり大泣きしたこともあった。プロ入り後は持将棋を挟んで11連勝だったが伊藤七段から深く研究され、叡王戦の初戦こそ勝利したものの第2局で初黒星。第3局でも敗れて2連敗と“天敵”となりつつあるところを踏ん張った。

 タイトル戦の同一シリーズでの連敗も、かど番に追い込まれたことも、初めての経験だった。それでも、前夜祭では「スコア的には苦しい状況ではある」と悲愴(ひそう)感を漂わせつつ、受け止めていた。本局での勝利後には「かど番はプレッシャーに感じていたか?」と問われ、約20秒うつむき、かみしめるように「自分にとっては大きな一局なので全力を尽くしたいと思っていた」と覚悟を持って臨んだ心境を明かした。

 負けることの方が珍しい藤井叡王は「結局は忘れることが一番」と冷静にメンタルも整え耐え抜いた。2勝2敗のタイに持ち直して逆王手をかけ、終局後に大盤解説に集まったファンの前に姿を現した時は安堵(あんど)の表情。さらに「次が持将棋(引き分け)がなければ最終局になるので、全力を尽くして悔いのないように戦いたい」と珍しく冗談を飛ばし、会場に笑いを誘う余裕も見せた。

 ただ、八冠陥落の危機を脱したわけではない。「ひとまず最終局に持ち込めたのはよかったですけど次も大事な一局になるので、そちらに向けても状態を整えていければと思います」。6月20日に行われる運命の第5局に全てをかける。

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