宝塚 星組・暁千星「夜明けの光芒」初日 闇堕ち、狂騒と破滅、愛憎を表現
宝塚歌劇星組スター暁千星(あかつき・ちせい)主演「夜明けの光芒」が3日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで初日を迎えた。
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの代表作「大いなる遺産」が原作で、これまで幾度も映像化されてきた作品。宝塚歌劇でも1990年に月組によって上演された。孤児のピップ(フィリップ)が謎の人物からの多額の遺産を受け取り、ロンドンで紳士としての生活を始めるが…。身分違いの高慢だが美しいエステラへの恋、ロンドンでの狂騒と破滅、愛憎などが描かれたかれたピップの成長譚が、宝塚らしいミュージカルとして描かれた。
ピップを演じる暁は、丁寧な演技。青年らしい傲慢さや、紳士クラブでの生まれからくる卑屈さなど、ピップの心の動きを繊細に表現した。だが傲慢さや卑屈さを演じても、宝塚らしく品を失わないのが暁の魅力。ピップの成長譚として、希望を醸し出した。
フィナーレではそれまでの暗い雰囲気を吹き飛ばすかのようなダンスを披露した。確かな実力に裏打ちされた一つひとつの動きも、正確で優雅。観客を魅了した。
ヒロインのエステラは瑠璃花夏(るり・はなか)。美しいが高慢、そして普通の人が持つ感情を封じられて育てられた難しい役どころにチャレンジした。
巨額の富を持ちながら、ダークな部分も大きいドラムルを演じた天飛華音(あまと・かのん)は、ピップの精神領域の闇としての顔も持つ二重構造な役。悪の部分の魅力を際立たせ、闇ダンサーを率いてのダンスは圧巻の場面となった。
ピップの同居人ハーバートは暗い場面や人物の中にあって、清涼剤的人物。大金持ちの一族に連なるが、安い給料で働き、親に頼らず自分の力で恋人との結婚を目指したりと、そんなごく普通の人物を稀惺かずと(きしょう・かずと)が好演。明るさを持ち込んだ。
また主人公たちの子ども時代のピップ役の藍羽ひより(あいはね・ひより)とエステラ役の乙華菜乃(おとか・なの)が熱演。物語の発端となるミス・ハヴィシャム役の七星美妃(ななせ・みき)の真っ白なメイクが、美しい声と抑えた演技が相まって、狂気を醸しだしていた。
大阪公演は8日まで。東京公演は東京建物 Brillia HALLは14日~20日。