中川大志 連ドラ&舞台&映画と演技漬け 支えになったコーチとのトレーニング法とは?

 俳優の中川大志(25)が、キャリアで最も忙しい1年を過ごしている。3クール連続で連ドラに出演し、4月期はテレビ東京系「95」(月曜、後11・06)とTBS系「滅相も無い」(火曜、深夜1・28)の2本で存在感を発揮。現在は舞台「儚き光のラプソディ」で劇場を沸かせ、出演映画「碁盤斬り」が公開中だ。八面六臂(ろっぴ)の活躍を支えるのは、コーチとの演技トレーニングという。売れっ子俳優の頭の中をのぞいた。

 真っすぐに記者の目を見て話す。目には力がこもっているのだが、圧がなく、自然な安心感がある。壁がない。

 昨年から作品が相次ぐ現状について率直に問うと「この仕事を始めて15年くらいになるんですけど、一番忙しかったといっても過言ではないくらい、かなりヘビーでハードな撮影期間でした。いま出演している舞台までは、いっとき3作品をぬっていたり。撮った時系列はもう、わかんなくなってます」と苦笑した。

 昨年10月期の「ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~」、今年1月期の「Eye Love You」、そして同4月期の2作と、連ドラで続けざまに中心的な役どころを担ってきた。犯罪組織のボスとして謎を抱え、人情味ある社長の右腕を演じれば笑いと涙を誘う。今クールではカリスマ高校生と平凡な大学生役。実にバラエティーに富んでいる。

 連ドラはすべてドラマ終盤と次作の序盤が交錯。映画などの撮影も重なり「珍しいです。同時並行になることをなるべく避けているんですけど、作品をまずきちっと読ませていただいて、どんなチャレンジができるのか考えながらやってきてはいて、それがたまたま重なって」と説明する。

 撮影は1作ずつにしたい。でも、役は逃したくない。天秤に載せた結果、やりたいが勝り続けた。1日で2作品を撮影し、馴染んだ役と馴染む前の役を行き来することもあったという。

 「マルチタスクが得意ではないので、タブが開いたままでパソコンが重くなっていくような感覚でした。作品のフォルダを閉じれないまま、2つ、3つと開いていて、一個一個の役を演じるのは想像以上にエネルギーを使うことでした」

 小5で事務所に所属してから、芸歴15年。オファーを受ける役が変化しつつあることを感じている。主演ではないが、複雑な表現を求められ、愛される役が増えてきた。

 「ちょっとずつオファーが変わってきている実感はあります。ここは絶対に外せないポジションを担う役だったり、そういうところにすごくやりがいを持っています」

 例えとして22年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で演じた武将・畠山重忠を挙げた。お家の名誉のために挙兵し、主人公との激突の末に討ち死にした武士の鑑。入魂の熱演でドラマから退場する際には「神回」と呼ばれた。

 「誰でも簡単にできるわけじゃないよねってところを自分に投げてくれた。ちょっとずつ役や作品に対する指標も変わってきているのかなって思いますね」

 演技漬けの日々を支えるのが、コーチとの“トレーニング”だ。コロナ直前から取り入れ「常にアップデートというか、作品の準備から基本的には演技のコーチと二人三脚でやっています」と明かす。「作品がないときも一緒にトレーニングします。『じゃあ、何をやるの?』って言われると、英語検定のように、この段をクリアしたから次に進もう、みたいなことが何一つない世界。役によって新しいアプローチや方法を試しています」。レッスンではなく、トレーニング。スポーツ選手のように、試合がない日でも演技を“鍛える”のが中川流だ。

 きっかけを与えてくれたのは、伯父だった。アメリカで長年、俳優をしており、ニューヨークのアクティングスクールについて聞く機会があったという。「僕もびっくりしたんですけど、アメリカでは、それこそアル・パチーノみたいな大御所の大ベテランたちが、作品がないときにスタジオにきて、役者の卵たちと一緒のスタジオでレッスンをするんですよ。そういうこともあってちょっとずつ興味を持って始めました」。海の向こうのメソッドまで取り入れ、ストイックに演技の筋肉に耳を澄ませている。

 次なる目標を聞くと「海外に行きたいですね」と即答した。「日本の現場しか経験がないので、すごく興味があります。どういうプロセスで、どういう作品作りをしているんだろうって、裏方的な目線もある。世界の物作りを見てみたいし、経験してみたいなって思いますね」。14日に迎える誕生日で26歳。充実の時を過ごしている。

 ◆中川 大志(なかがわ・たいし)1998年6月14日生まれ。東京都出身。小学4年生の時にスカウトされ、2009年に子役としてデビュー。11年にドラマ「家政婦のミタ」で一家の長男を演じ、注目を集める。19年、日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。主な出演作は朝ドラ「なつぞら」「らんまん」、映画「スクロール」など。auのCM「意識高すぎ!高杉くん」シリーズの細杉卓役でも知られる。

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