「虎に翼」主人公の兄役演じた上川周作 俳優業の原点は? 9月に初二人芝居「コミュニケーションの大切さ伝えたい」
放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、主人公の兄である猪爪直道役を務めた俳優・上川周作(31)が確かな演技力で脚光を浴びている。9月からは舞台「ボクの穴、彼の穴。W」(9月17~29、東京・スパイラルホール。10月4~6、大阪・近鉄アート館)で初の二人芝居に挑戦。独特の存在感を放ち続ける上川の俳優としての原点に迫った。
ちょっと的外れな「俺には分かる!」のセリフ。家族思いで優しい直道は、猪爪家の人々からはもちろん、視聴者からも愛される存在だった。上川自身、朝ドラに出演して知名度が上がった実感もある。「声をかけてくださる方たちが皆さん、笑顔なんですよね。その表情を見ていると、作品を楽しんでくださっているんだなって素直にうれしいです」と穏やかな表情で明かした。
少年時代はサッカーに没頭した。憧れの選手は「ゴン」の愛称で絶大な人気を誇った元日本代表FWの中山雅史氏。ユニホームを泥だらけにしながら闘志をみなぎらせる姿に心を躍らせた。
「サッカーの練習後に走って。朝起きたら、また走って。陸上部のようにずっと走っていましたね」。中学時代、市の選抜チームに選出されたが、同時に大きな壁も感じたという。「県選抜の選手と試合をすると経験の差や身体能力が明らかに違って。高校に入ったら、なんとかなるかと頑張りましたが」。
意を決してサッカーの強豪校に進学したが、「技術は絶対にかなわない」とチームメートとの実力差を感じたという。選手として挫折を経験したことで、サッカーを指導する教員を志して大学に進学。そこでの恩師との出会いが俳優への道を決定づけた。「自由にやりたいことを見つけなさいと寄り添ってくださる先生で」。将来を見つめ直した時に幼少期の記憶がよみがえった。
「祖父が大分の県庁に勤めていて。ボランティアで聾唖(ろうあ)の方たちと劇団を立ち上げていて。僕も幼稚園の時に『花咲か爺』に、桜の木の役で出してもらいました。出演者の皆さんとともにした達成感や喜びはずっと覚えていて」
桜の木を演じた“初舞台”から二十数年。9月に初の二人芝居に挑む。
「緊張はしていますけど、きちんと準備したものをお見せできるように何回も繰り返して、なじませます。(相手役の)井之脇海くんの雰囲気や呼吸を注視しながら、同時に自分を知ってもらうことを意識して。コミュニケーションの大切さを2人の舞台で伝えたい」
ただ、ひたむきに。泥だらけでボールを追いかけていた頃と変わらない真っすぐなまなざしが「今」を作り上げている。
◆「ボクの穴、彼の穴。W」 戦場に残された敵対する2人の若い兵士。「ボク」と「彼」は疑心暗鬼と空腹の中で互いへの恐怖にさいなまれる。幾度も限界を迎えながら「ボク」は新たな未来へ踏み出すために勇気をもって「彼」を知ろうとする。劇団「大人計画」主宰・松尾スズキが翻訳した絵本を劇作家のノゾエ征爾氏が舞台化した二人芝居。ボクチーム(井之脇海×上川周作)と彼チーム(窪塚愛流×篠原悠伸)のダブルキャストで上演する。
◇上川周作(かみかわ しゅうさく)1993年2月18日生まれ。大分県出身。インターハイ出場常連の強豪・広島県瀬戸内高校でサッカー部に入部。京都芸術大学在学中に映画「正しく生きる」などに出演。「虎に翼」で共演の女優・土居志央梨(山田よね役)は同大学の同級生。朝ドラは2018年の「まんぷく」にも出演。映画「止められるか、俺たちを」(18年)など話題作に多数出演。特技はサッカー、サックス。