藤岡弘、世界に「武道の神髄」伝えて 高校時代は柔道部主将 天翔愛&真威人と親子で日本柔道にエール
日本のお家芸である「柔道」に全力エールを送るのは俳優・藤岡弘、(78)、長女で女優の天翔愛(22)、長男で俳優の藤岡真威人(20)。今大会では女子48キロ級の角田夏実選手が日本選手第1号の金メダルを獲得するも、52キロ級の阿部詩選手が2回戦で敗退する波乱も起こった。国際的なアクション俳優にして、武道家としての顔を持つ弘、はロス五輪の名場面を回想。山下泰裕氏とエジプト代表・ラシュワン氏による無差別級決勝の感動を振り返りながら「武の道」をテーマに親子3人で語り尽くした。
弘、が五輪柔道に思いをはせるとき、決して忘れることのできない場面がある。1984年ロス五輪、山下泰裕氏とエジプト代表のラシュワン氏による無差別級の決勝だ。山下氏は2回戦でふくらはぎを痛め、右足を引きずりながら金メダルの懸かる大一番に臨んだ。
「ラシュワン選手は(山下氏が)痛めていた右足を狙わなかった。攻めなかった。痛めた箇所を狙えば勝てただろうに、そうはしなかった。世界中が称賛しましたね」
感動を振り返る言葉には熱がこもる。激痛をこらえ、金メダルの表彰台に上る山下氏の体をラシュワン氏が支えた瞬間に世界中が喝采を送った。
「あれこそがまさに武道の神髄。勝ち負けじゃないんです。あの精神を日本の選手たちには死守してもらいたい」
「柔道」とは「武道」とは。まさに弘、にとって生きてきた道そのものだ。武道家の父から教えを受け、幼少期を過ごした。愛媛・松山聖陵高時代に部の主将を務め、朝から晩まで柔道に打ち込んだ。俳優を志して上京した時もアルバイトでためた3万円と、汗の染みこんだ柔道着を大切に抱えて寝台車に飛び乗った。病弱だった少年は「武の道」に導かれるように国際的なアクション俳優の座へと駆け登った。
「『柔の道』『武の道』と書きますね。スポーツではないんです。道なんです。日本の誇りなんです。日本の選手たちには武道の神髄を世界に向けて堂々と見せてほしい。『為すべきを為す』。試練に立ち向かえば必ず答えは出ます。日本人の誇りを背負って、世界で見せてほしい」
父から弘、へ。弘、から子どもたちへ。「武の道」は途切れることなく続いている。
長女の愛は「武道に不可欠な『礼に始まり礼に終わる』を父の背中から学んできたつもりです。ただ、お辞儀をするのではなく、心から『ありがとうございます』の思いを込めることで、初めて礼になるんだと」と教えを実感している。
長男・真威人は「僕も姉と同じ時期に武道を教わりました。道場に入った瞬間、そこは神聖な場所です。感謝の思い、人の道。武道が身近にあったから身につけられたと心の底から感じています」と明かした。
「柔の道」「武の道」でつながれた親子の思いは一つ。日本の「誇り」が世界中の心を震わせると信じている。
◇藤岡弘、(ふじおか・ひろし)1946年2月19日生まれ、愛媛県出身。65年に松竹映画で俳優デビュー。71年放送「仮面ライダー」の本郷猛役でブレーク。73年公開の大ヒット映画「日本沈没」など主演作が多数。84年にハリウッド映画「SFソードキル」に主演し日本人で初めて全米映画俳優組合入り。真剣の演武を各国で行うなど武道家としても有名。
◇天翔愛(てんしょう・あい)2001年12月14日生まれ。東京都出身。俳優・藤岡弘、の長女。音大在学中の21年にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のヒロインで女優デビュー。23年、NHK大河ドラマ「どうする家康」におふう役で出演。特技はシナリオ作り、折り紙、オブジェ制作。
◇藤岡真威人(ふじおか・まいと)2003年12月28日生まれ。東京都出身。俳優・藤岡弘、の長男。20年に俳優デビューし、翌21年に映画「仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ」で本郷猛を熱演。父・弘、と親子2代にわたる本郷役で話題に。柔道、空手、杖術(じょうじゅつ)など多くの武道に精通。