吉沢悠 観客の心に魔法かける 舞台「ハリー・ポッター」主演ゲットの裏に師匠の存在
俳優の吉沢悠(45)が、新ハリー・ポッターとして奮闘中だ。上演3年目を迎えた舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」(東京・TBS赤坂ACTシアター)に7月から主演し、観客の心に魔法をかけ続けている。オーディションで大役を射止め、充実の40代を過ごす裏には「魔法使い」と呼ぶ師匠との二人三脚の日々があった。
取材部屋だった赤坂ACTシアター支配人室の壁には、校長室のように歴代ハリー役の写真が並べられていた。ふと目をやって歴史の重みをかみしめつつ、吉沢は「あそこにいるハリー役の全員にはお会いできてないですけど、勝手に『ここまでつないできてくれて、ありがとうございます』って気持ちになってます。自分がハリーをやってみて、皆さん、とんでもないことをされていたんだなってすごく感じますね」と目を細めた。
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は、小説版のラストから19年後を舞台に、大人になったハリーと次男アルバスの家族模様を描く。闇の帝王・ヴォルデモートを滅ぼし、大魔法使いとして名をはせるハリーが、親として葛藤する姿が新鮮だ。2022年7月の開幕から動員100万人突破間近の人気作となっている。
役はオーディションで射止めたが「詳しくは言えないんですよ。秘密なんちゃら事項があって」と時期や内容は口外無用。最近まで本番以外で魔法のポーズをするのが禁止されていたりと、ハリー・ポッターの世界観を守るため、多くの制限が設けられているという。
6月には元祖英国版を観劇。ウエストエンドで現地のハリー役から「君なりのハリーをやるのが一番だよ」と背中を押され「その意味が今ならわかります」とうなずく。
「ダブルキャストの平方(元基)さんとも、お互いの解釈を吸収し合いながらやっていて、じゃあ、似てるかといったら似てない。まわりからも『それぞれのハリー像があるね』と言われます。ハリーを演じる人が変わるのも、その人なりに発するものがあるから面白いんだと思います」
大役ゲットの裏には、4年前から師事する「魔法使い」の存在があった。時代劇などのオファーに即対応できるよう、伝説の殺陣師・林邦史朗さんの右腕だった先生から学んでおり「技術を教わると思っていたんですけど、8割くらいは人間形成を説いてもらってます。前は不安要素に意識がいきがちだったんですけど、今は前向きにチャレンジできる様に変わってきた。魔法使いなのかもしれないです」と笑う。
数ある教えの中に「年齢の通りに考えるな」という言葉がある。「年齢の通りに考えるからいろんなことができなくなるんだ、と。(ハリーの恩師の)ダンブルドア的なところがあります。ダンブルドアって導くけど、はっきり答えを出さないじゃないですか?それが結局、成長につながっていたりするんです」。
20代、30代を「あたふたしていた」と振り返り、40代もいまだ成長の途上。「50代が見えてきて、変な話、明日どうなっているかわからない。1日1日をどう濃く過ごすかが大事なのかなって思うようになってますね」。師との時間を糧に、魔法の世界を日々、研ぎ澄ましている。
◇吉沢悠(よしざわ・ひさし)1978年8月30日生まれ。東京都出身。98年にドラマ「青の時代」で俳優デビュー。03年の「動物のお医者さん」で連ドラ初主演。主な出演作は主演映画「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」など多数。来年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では松本秀持を演じる。