舘ひろし「あぶない刑事というのは柴田恭兵のもの」 長寿刑事ドラマの秘けつ「悲壮感を否定」
俳優・舘ひろし(74)がエネルギッシュだ。前作から8年を経て5月24日に公開されたシリーズ最新作「帰ってきた あぶない刑事」は観客動員119万人超、興行収入16億3200万円超(いずれも8月18日現在)と前作を上回る数字を記録、世代を問わず多くの支持を集めている。共演者でバディを組む俳優・柴田恭兵(73)への感謝の思いや若さを保ち続ける秘けつ、人生の師という故・渡哲也さんの教えなどを余すことなく明かした。
8作目となった映画「あぶない刑事」シリーズ。観客動員もさることながら、興行収入も前作「さらば あぶない刑事」の16億2500万円を超え、多くのファンが映画館に足を運んでいる。
「おかげさまで。今作は今までのあぶない刑事に関わってきたスタッフからまるっきり変わり、演出家や、監督、カメラマンも若くなった。カメラワークもこれまでと全く違い、新しいあぶない刑事ができました」
86年に日本テレビ系ドラマとして誕生し、映画も含めて38年目に突入した。老若男女に愛される“長寿刑事ドラマ”になり得た秘けつについて「悲壮感を否定したんですね。どんなにつらく悲しくても、ジョークで乗り越えていくというか。そこが新しかったと思います。今でもそういうフォーマットで刑事物を描けているのはなかなかないと思うんですね」とうなずいた。
舘が演じる鷹山敏樹と、柴田が演じる大下勇次のタカ&ユージ。凶悪犯を前にしても悲壮感はなく、時にはコミカルに立ち向かい、ドラマ史に残る名コンビの地位を確固たるものにした。その真髄を「あぶない刑事というのは柴田恭兵のものだと思っているんです」と明かし「バディを組む刑事物はその後、いっぱい出ましたけど、結局は超えられないですもんね。それは、柴田恭兵がいないからなんですよ。僕の役割というのは土台のようなもので、そこにあぶない刑事という形を作っている。これだけのものはなかなかできない。恭サマのもんですよ」と感謝した。
お互いに古希を迎えた。今作は年齢に相応し、神奈川県警を定年退職後に探偵事務所を開く役柄の2人だが、作中での妥協のないアクションシーンは話題を呼んだ。これまでと変わらず舘はオートバイにまたがり、ショットガンを撃ち放つ。「もう限界です」と笑いながらも「オートバイに乗っているのはいい。走ってるのはオートバイですから。それより恭サマがあれだけ走れるのは尊敬します。柴田恭兵という俳優さんは本当にすごいなと思います」と感服する。
長くコンビを組み続けられた2人の関係を問うと、口調に熱が帯びた。「四角いテリトリーの中で対角線の一番遠くにいる存在だと思うんですよ。だからうまくいったんじゃないかと。似ている感じでサングラスをしているけど、根本が全く違うところがよかったんじゃないかなと思います」。際立つ個性が対極から挟み込んでいることが良質な作品作りに生かされてきたと推察する。
79年に「西部警察」で刑事役デビューを果たしてから半世紀近くが過ぎた。役を演じるうえで、石原プロモーション時代からの師匠・渡哲也さんの言葉が今も心に刺さる。「『芝居はうまくなっちゃいけない。存在感で見せろ』と言われたことがあるんです。それは僕の中ですごく心に残っています」。多くの映画、ドラマに出演するが「芝居を極めたことはないですよ」と強調する。「それぞれタイプがあるけど、僕はあまり芝居がうまくならない方がいいタイプかなと。それで、渡さんから『ひろし、芝居はうまくなるな』って言われたのが、良かったんだなと思います」。ふに落ちる“金言”を残してくれたことに感謝する。
早くも次作への期待も高まっている。「全く考えていません。今度やるとしたら、77か78(歳)ですかね。あんまりみっともないのはダメです」と笑う。若々しく役回りを演じる舘に、期待感を抱かずにはいられない。
◇舘ひろし(たち・ひろし)1950年3月31日生まれ。愛知県名古屋市出身。千葉工業大工学部卒。75年にロックバンド「クールス」を結成。84年にはシングル「泣かないで」がヒットしその年にNHK紅白歌合戦に初出場。俳優としては76年に映画「暴力教室」でデビュー。79年からテレビ朝日系ドラマ「西部警察」、86年から日本テレビ系ドラマ「あぶない刑事」に出演。94年には映画「免許がない!」などコミカルな役柄もこなした。24年にはフジテレビ系ドラマ「ブルーモーメント」に出演。A型。