藤井聡太王位 渡辺明九段を97手で破り防衛 史上最年少永世二冠に「幸運もあったと思います」
将棋の第65期王位戦七番勝負・第5局2日目が28日、神戸市・中の坊瑞苑で行われ、先手の藤井聡太王位(22=竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖)が渡辺明九段(40)を97手で破り、対戦成績4勝1敗で防衛に成功。王位5連覇となり、棋聖位に続き自身二つ目の永世称号となる永世王位の資格を得た。永世称号を複数獲得したのは5人目で、22歳1カ月での永世二冠は史上最年少となる。
大勢の決した最終盤、藤井王位は何度も盤面を確認。じっくりと手を進め、勝利が決まると挑戦者に対して深々と頭を下げた。
6月の叡王戦で伊藤匠七段に敗れて失冠。八冠の称号こそ失ったものの、その強さは健在だった。優位に立った対局終盤、「自信の持てない展開になってしまった気もしていた」と、渡辺九段の巻き返しにあったが、最後まで攻勢を仕掛けてきた相手を冷静にさばき切った。
7月に史上最年少で獲得した棋聖位に続いて、2つ目の栄冠を手にした。「対局に臨むうえでは意識はしていなかった」というが、新たな歴史を刻み「獲得できたことはうれしく思っていますし、自分自身、いろんな経験ができたかな、と思います」と、率直に喜びを語った。
永世称号を手にしたのが史上最年少なら、永世二冠も最速。これまで最も若かった羽生善治九段の24歳9カ月を上回った。二つ以上の永世称号を得たのは藤井王位のほか、最多七冠の羽生九段、五冠の故大山康晴15世名人、五冠の中原誠16世名人、二冠の渡辺九段。名だたる棋士と肩を並べた。
難解な局面が続いた激戦を「難しい局面が続いた将棋だったかな、と思います」と振り返った藤井王位。偉業達成にも「防衛という結果には幸運もあったと思いますし、今後も力をつけていかないといけないと感じたシリーズだった」と、反省が口を突く。冠を重ねても謙虚な姿勢は変わらず、さらなる成長を誓っていた。