中村獅童 9年ぶり京都・南座「あらしのよるに」ハートフルな歌舞伎

京都・南座「あらしのよるに」
左から中村壱太郎、中村獅童
左から中村壱太郎、澤村國矢、中村錦之助、市村橘太郎、中村獅童、坂東新悟、市村萬次郎、市村竹松、河原崎権十郎=南座
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 九月花形歌舞伎「あらしのよるに」が京都・南座で上演されている。

 きむらゆういちの同名絵本が原作の新作歌舞伎で、狼のがぶと山羊のめいの友情を描いている。2015年に南座で初演以来、翌年には東京・歌舞伎座、さらには福岡・博多座でも上演された人気作。絵本発刊30年を記念したもので、初演からがぶを演じる中村獅童はそのままに、今回新たにめい役を中村壱太郎が演じた。

 がぶはオスの狼だが、めいやオスともメスとも性別不明の設定で、絵本でも舞台でも見る人にゆだねられている。これは男同士の普通の友情や「ロミオとジュリエット」のような恋愛要素を排除するため、原作者があえて不明としている。そんな設定が歌舞伎化にはプラスに働き、女形がメイを演じることで、役や筋の本質が見えてくる。お家騒動ものを見ている感覚の一方で、個体の種や姿かたちにとらわれない友情はハートフルで、現代に通じるものがあり、世界的紛争が続く現代にふさわしい作品になっている。

 古典歌舞伎の演出が随所に取り入れられた一方で、義太夫と出演者のやりとりやなど軽妙で、客席を使った演出、一幕の時間など、歌舞伎通はもちろん初心者にも飽きさせない。実際、客席には絵本を読んだ子どもたちも熱心に見入っていた。

 本作の歌舞伎化にも携わった獅童のがぶは、4度目ともありさらに進化を遂げた。独特なせりふ回しや、動きも滑稽味を持たせたり、涙を誘ったりと物語の世界にぐいぐいと引き込んでいく。

 今回からめいを演じる壱太郎は、少女の可憐さと、少年のいたずらっぽさ、それでいて山羊でありながら芯の強さを感じさせる。

 また山羊のみい姫役の坂東新悟が姫としての品格を見せ、河原崎権十郎、市村萬次郎、中村錦之助らが舞台を締めた。

 26日まで。

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