「ドラえもん」声優・大山のぶ代さん死去 90歳、老衰 晩年は認知症で闘病
国民的アニメ「ドラえもん」のドラえもん役で知られる声優で女優の大山のぶ代さん(本名・山下羨代=やました・のぶよ)が9月29日午後4時23分、老衰のため都内の病院で亡くなったことが11日、分かった。所属事務所が発表した。90歳。東京都出身。葬儀は親族のみで行われた。個性的なハスキーボイスで約26年にわたりドラえもんを演じ、幅広い世代から支持された。2015年に認知症を公表。17年に夫の砂川啓介さんが亡くなって以降は、介護施設に入所していた。
愛きょうある声で発せられた「ぼく、ドラえもん」のセリフは多くの子供たちにマネをされた。ドラえもんを誰からも愛される国民的キャラクターに育て上げた大山さんが天国へ旅立った。
関係者によると、介護施設に入所していた大山さんは今年に入って入退院を繰り返していたが、9月に再入院すると、そのまま帰らぬ人となった。晩年はアルツハイマー型認知症の症状が進行し、自分から言葉を発することはほとんどなくなっていたというが、施設職員らの呼びかけに反応し、長年行動を共にしたマネジャーの声も聞き分けていたという。
幼少期、自身の個性的な声に思い悩んだ大山さんだが、短所だと思っていたその声を生かすため演技の道へ。俳優座養成所を経て、1957年に「名犬ラッシー」の吹き替えで声優デビューした。79年スタートのアニメ「ドラえもん」では、原作にほれ込みオファーを快諾。あまりのハマリぶりに、原作者の藤子・F・不二雄氏も「ドラえもんはこういう声だったんですね」と認めるほどだったという。
しかし、2001年に直腸がんで入院したことをきっかけに降板を意識し、71歳だった05年3月に他の主要キャストと勇退。26年間務めた役を次の世代に託した。最後のアフレコを終え、「ドラえもんは私の子供というか、身内。ドラえもんは私の中にいつもいますから、寂しさはあまり感じていません」と語るなど、子供のいなかった大山さんにとってドラえもんは愛するわが子だった。
今年7月にはのび太役の小原乃梨子さんが死去したばかり。ジャイアン役のたてかべ和也さん、スネ夫役の肝付兼太さんも亡くなっており、当時の主要キャストで存命なのはしずか役の野村道子だけとなった。
08年4月に心筋梗塞と脳梗塞で倒れ、15年には認知症での闘病を公表。砂川さんらの支えもあり自宅で生活していたが、16年に砂川さんの尿管がんが発覚して以降は介護施設に入所。17年に砂川さんが亡くなった際は、葬儀で喪主に名を連ねたが参列はできなかった。
生前、「遠い未来までずっとずっとみんなに愛される『ドラえもん』であってほしい」と熱い思いを語っていた。その願いは後を継いだ水田わさびらによって叶えられ、ドラえもんは愛される存在であり続けている。