【ヤマヒロのぴかッと金曜日】返り咲くトランプ氏、日本も「令和の大政局」
米国大統領選はトランプ氏が勝利した。この原稿を書き終えた7日昼過ぎの時点では上院に続いて下院でも票を伸ばし、トリプルレッドの共和党政治がスタートする可能性が高い。不思議な話だ。ハラスメントという言葉を生んだ国であれほど暴言、妄言を重ねながら再びアメリカのリーダーの地位に就くのだから。
米国特有の選挙人制度では民意がきちんと反映されないとも言われるが今回は各州で票を得た。返り咲いた大統領を受け入れざるを得ないが、分断された社会がこれ以上こじれないか、ウクライナやガザにはどんな未来が待っているのか、心配の種は尽きない。
さて、わが国でも新しいリーダーが誕生したものの、今は『令和の大政局』。こちらは少なくとも来夏の参院選あたりまで何が起きても不思議でない状況になってきた。「これは面白い展開になってきたぞ」。私のようにそう思ってる人がけっこういるんじゃないか!?
決して楽しんでいるわけではない。乱世を望んでいるわけでもない。しかし衆院選を通して、身近で必要な政策を手にするチャンスを、あるいはそうした状況を、この国の有権者は自らの手で作り出したのだ。見事なまでのバランス感覚である。
どの政党も過半数に届かないハング・パーラメント『宙ぶらりん議会』は不安定だと悲観する声が上がるが本当にそうだろうか。逆に聞きたい。政権が安定して景気は右肩上がりになったか?株価は上がっても暮らしが良くなったと喜ぶ人がどれほどいるだろうか?
政府が考えてきたのは「庶民が望むものなど適当に与えておけばいい」というものだったのだ。官僚の知恵を借り、ブクブクと太った大企業や富裕層から献金を受け、票をかき集めることしか考えない。そんな政治家が断罪されるのは当然のことだ。
“小さな声を聴いてくれる”はずの公明党の力を借りて、これまで自民党は上手に解散総選挙を仕掛け、そのつど政権の力を強めてきた。今回も早期に解散を打つことで難局を切り抜けようとした。実は戦略としては間違ってはいない。時間がたてばたつほど政権交代の危険性は増しただろうから。しかし過半数には届かなかった。立憲民主党も議席は増やしたが目的は果たせなかった。なので宙ぶらりん。
一方で『103万円の壁』突破を訴え続けた国民民主党が多くの議席を得た。自民党が政権を維持するには国民の生活向上に直結するものを与えざるを得ないのである。他にももぎ取れるものがあるぞ!国民民主党は浮かれずその期待に応えねばならない。
ただ、宙ぶらりん状態で困るのは外交。保護主義政策のモラハラ大統領が不安定な日本のリーダーをどこまで相手にするか。いくばくかの果実を得た後、国民は強い政権を望むことになる。(元関西テレビアナウンサー)
◆山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は自家菜園。