三上博史 20年ぶりヘドウィグ 伝説のロックミュージカルがライブ・バージョンで復活 「少しでも呼吸できるような空間」感じてほしい
三上博史の「ヘドウィグ」が20年ぶりに復活する。舞台「HIROSHI MIKAMI/HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】」(26日~12月8日、東京・PARCO劇場ほか)に出演する三上がこのほど、デイリースポーツの取材に応じた。2004年の初演時から20年。ライブ・バージョンとして復活する舞台への意気込み、俳優としての信念や生きざまに迫った。
伝説となった名作ロックミュージカルが、日本初演から20周年を記念して三上とバンドによるライブバージョンで復活する。バンドは、1人をのぞいて初演当時のメンバーが集結。三上は「それぞれ同じことをやっても、きっと20年の彼らの人生が出てきて面白いことになる。深みは増してくるんだろうな」と意気込みを語る。
作品の出会いは、03年上演の舞台「青ひげ公の城」の出演後。当時拠点だった米国・西海岸でふらりと立ち寄った劇場で見た「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の音楽性に強くひかれたという。
自身の希望がかなって、04年に日本初演。「すごく自分でも『自由に、本当に泳ぐようにやれた』」と振り返るように、日に日に観客の熱狂が高まる手応えがうれしかった。三上のチャーミングでパワフル、セクシーなパフォーマンスは話題となり、多くのリピーターを生んだ。
今回は芝居なし、歌唱のみのスタイルに形を変えるが「皆さんが何が見たいかとか、手に取るように分かっちゃうんです」とうなずく。「だから20周年で、三上博史がヘドウィグを歌うっていうシンプルな形でもいいのかもしれないけど、これはもう皆さん許さないだろうと。だから扮装(ふんそう)はします!」と笑った。
トレンディードラマに多く出演し、その名を広めてきた。長く続いている役者人生。その中で、俳優としての信念がある。役者としてのキャラクターやイメージを固めることよりも、自らが心血を注いだ作品を何よりも見てほしいという。
「その邪魔になることは絶対したくない。皆さんが僕のパブリックイメージを自由に七色に、なんなら百色に描けるのが一番」
だからこそ「20代の頃に50代の役をやっても、別にその物語の中でそう見えればいいじゃん」と自身のプロフィルから年齢表記を消した。「僕は役者というのは物語の“語り部”だと思っているんです」と強い思いを口にした。
20年ぶりにヘドウィグとして立つ舞台。観客に感じてほしいことを問うと「僕自身、答えが出てないんですよね。僕、きっちりしてるように見えるかもしれないけど、いいかげんで委ねちゃうところもあるんで」と苦笑いで答えた。ただ、作りたいのは「少しでも呼吸ができるような空間」という。
現在の世界を「壁だらけの世の中。それは取りつく島のないぐらいの分断で意思の疎通もできずに、そこでバーンと切られちゃう」と憂う。そう感じるからこそ「押し付けがましくなっちゃうのはすごく嫌なんですけれど。もうとにかく大丈夫、大丈夫だからきれいに生きようって(伝えたい)」と語りかけるように話した。
◆ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 1997年に米ニューヨークのオフブロードウェイで初演されたロックミュージカル。性別適合手術を受けた際、手術ミスで“怒りの1インチ(アングリーインチ)”が残った主人公・ヘドウィグが、最愛の人に裏切られながらも、愛を探し求めさまよう姿が描かれる。2014年には「トニー賞」を受賞した。
◇三上博史(みかみ・ひろし)東京都出身、横浜市育ち。故寺山修司監督作品の映画「草迷宮」に主演し、俳優デビュー。TBS系「無邪気な関係」(1984年)でドラマ初主演を果たし、映画「私をスキーに連れてって」(87年)で注目を集める。トレンディードラマをはじめとした連続ドラマや映画、舞台など幅広く活躍している。身長171センチ。