銀シャリ・橋本直 M-1王者のルーツは「無口な少年時代」 芸歴20年目も「芸人の世界にいるのが夢みたい」

 お笑いコンビ・銀シャリの橋本直(44)は、芸歴20年目ながら「芸人の世界にいるのが夢みたい」で慣れないという。このほど、初の著書「細かいところが気になりすぎて」(新潮社)を発売。日常で気になった出来事に思わずツッコミを入れている1冊だが、そのルーツをたどると、テレビが好きで芸人に憧れを持った「無口な少年時代」があった。M-1王者となり、漫才師として名実ともに輝かしいキャリアを経ても「地味」だと語る芸人人生。その理由や、素顔に迫った。

 初の著書は全20編のエッセー集。面倒だという携帯電話の機種変更や、おしゃれすぎるゆえに頼み方の分からないカフェなど、細かすぎる描写で日常を記し「僕も読んでうるさいなと思いましたね」と“自賛”する。

 気になったことは脳内で即座にツッコんでしまう性格。いかにもおしゃべりなイメージがあるが、作中では「笑顔の記憶がない」とつづっているほど、幼少期は人見知りで無口だったという。

 「おやじが怖かったんで空気を読んでたんでしょうね。人の顔色をめっちゃ感じ取れてた」

 そんな幼少期を支えたのが大好きなテレビの世界だった。「日曜日はもう朝5時に起きてずっと見る。分からんのに囲碁とか政治のやつとか見てましたもん」。

 そして芸人に魅せられた。タイトル通り自身が「細かい」のは「芸人さんのおしゃべりを見て、いつの間にか培われていったのかも」と分析する。

 芸人を志したのは大学生の時、就活で路頭に迷ったからだった。中学受験を経て大学までエスカレーター式で進学したが「何も考えずにそのまま大学に行ってしまった。一番エスカレーター式の悪い所を浴びた男ですね」と苦笑い。「ほんまパワプロとウイイレと深夜のお笑い番組しかやってなくて、エントリーシートに長所と短所が書けなかった」。典型的なダメ大学生だった。

 だが、お笑いを見続けていたことが唯一の長所になった。それまでは流されて生きてきた人生。「唯一ここサボったら、多分ずっとふんわりすると思って」と自ら芸人になることを決断。作中でもこれを「人生で発揮した唯一の勇気」としている。

 そこから芸歴は20年目を迎えたがいまだに「芸人の世界にいるのが夢みたい」な感覚だという。

 「自分の憧れてた人が『橋本はさぁ』って自分の名前を呼んでるのは脳がバグりそうなる」。テレビに夢中だった幼少期と体感は変わらない。「お笑いマニアが潜入してる感じ」と笑った。

 それでもM-1をはじめ数々の賞レースで記録を残し、芸人として申し分ないキャリアを歩んでいる。一方で、着実に進んでいるからこそ、自身は「地味」だと語る。

 「芸人の世界において、階段1歩ずつ上がるやつって地味なんです。着実だから芸人ぽくないんです。“破天荒タイプ”に憧れるんです。酔いつぶれて道ばたで寝てみたかったですよ。ちゃんと帰りますから」

 憧れた芸人像ではないかもしれないが、「自分らしいかな」と不満もない。むしろそんな自分が好きになっている。

 「“橋本少年”からしたら一番好きな漫才師が銀シャリ。銀シャリの一番のファンでもあるんで、それが思えてる限りはいいかなと」。たとえ芸能界には慣れずとも、地味だと自覚していても、幼少期から大好きだった「笑い」への思いが変わることはない。

 ◇橋本 直(はしもと・なお)1980年9月27日生まれ。兵庫県伊丹市出身。関学大卒。2005年8月、橋本がコンビを組んでいた元相方から、NSC25期生の同期だった鰻和弘を紹介されたことをきっかけに鰻と「銀シャリ」を結成。07年「第28回ABCお笑い新人グランプリ」新人賞獲得。10年「第40回NHK上方漫才コンテスト」優勝。16年「M-1グランプリ」優勝など、賞レース受賞歴多数。趣味はラーメン食べ歩き、サッカーなど。特技は「上手く言う事」。身長176センチ。

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