高橋陽一氏 現実のクラブ経営は「漫画みたいにうまくはいかない」【インタビュー第2回】
28日からデイリースポーツで連載開始となる漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏(64)のインタビュー第2回。自身が代表を務める関東サッカーリーグ1部の南葛SCについて、クラブ経営に携わったきっかけや、風間八宏監督(63)を迎えて臨んだ今季を振り返り、目標のJリーグ昇格への思いを明かした。
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-実際のクラブ経営に乗り出したきっかけは。
「サッカーの取材とかで欧州などへ行くと、どんな小さな街でもわが町のクラブがあるんです。そういう文化がすごくいいなぁと。僕も自分の地域に応援できるサッカーチームが欲しいと常々思っていました」
-Jリーグも東京は西東京のクラブが多い。
「そうですね。下町エリアというか、東東京にチームがなくて。何となく西東京のチームを応援する感じになれなかった。そうしたら(Jリーグを)目指していますというチームがあったので、最初は応援する形で関わらせてもらいました」
-当初の後援会長から現在はクラブの代表に。
「南葛SCというチーム名にしませんかと提案させてもらい、チーム名が変わって『キャプテン翼』に出てくるチームがリアルに生まれたんですけど、南葛というチームを作ってもらったので関わらざるを得ないというか(笑)。途中で抜けられなくなりました(笑)」
-現実のクラブ経営は難しい。
「大変です。漫画みたいにうまくはいかないですね。漫画だと、翼くんはめったに負けないんですけど、リアルだと結構負けます(笑)。でも長い目で、Jリーグ入りが最初の目標なので、そこに向かって少しずつ進めればいいかなと」
-今年は風間監督となりチームに変化は。
「選手も既存の選手が多かったので、やりくりという部分で風間さんも難しさがあったかもしれない。この1年で把握していただけたのではと思うので、僕は2年目からが本当の勝負かなという気持ちでいます」
-1年間で風間サッカーも浸透してきて、面白い試合も増えてきた。
「そうですね。南葛SCは『ボールは友達』というボールをつないで大事にして戦っていくサッカーを目指しています。それがさらに風間さんに来ていただけることでパワーアップして、より相手を圧倒できるようなサッカーができればいいなと考えています」
-来季以降のJFL昇格へ可能性を感じた。
「徐々にチームとして成長しているので、来年が非常に楽しみですね。ただ、最初に関わり出した時から関東1部からJFLへ上がるのが一番難しそうだと思っていました。Jリーグ入りへ、諦めなければいつかはかなうという思いです」
-ホーム試合など地元の盛り上がりに変化も。
「東京3部から始めた頃はサポーターも数名。みんな恥ずかしがりながら声を出していた状態でした。今は本当に多くの皆さんが来てくれるようになって、葛飾の地元チームとして根付いてくれたのかなと。最初に僕が思っていた自分が応援できる地元チームという部分では、結果は出ていると思っています」
◇高橋陽一(たかはし・よういち)1960年7月28日、東京都葛飾区出身。80年に「週刊少年ジャンプ」での読み切り作品『キャプテン翼』で漫画家デビュー。翌81年に連載開始。83年からはテレビアニメ化され、日本にサッカーブームを起こした。2013年には地元・葛飾区のサッカークラブ「南葛SC」の後援会会長を務め、19年からはオーナー兼代表取締役に就任。23年には漫画を通した多大な貢献から日本サッカー殿堂入りを果たした。